昔取った杵柄を探して

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 田舎に里帰りしたが、特にやることがない。ヒマを持て余す。そういう経験をする人は、けっこういるのではないか? 僕は、昼間からコタツに入ってごろりごろり。ぼんやりと過ごしていた。  年越しは祖父母の家で過ごそうと、僕たち家族で揃って出向いていた。とはいっても、父はまだ仕事があるため年末のギリギリに一人で来ることになっている。だから僕と、妹と、母の三人で祖父母の家にお邪魔している。この家で僕らを招いた爺ちゃんと婆ちゃんを合わせると、五人がこの家に集まっているわけだ。  妹、母、婆ちゃんの女性陣は揃って、年末までセールをしているデパートに繰り出してくるとのことで、朝からいそいそと出かけてしまった。というわけで、いま家にいるのは僕と爺ちゃんということになる。  こちらの地域に友人もいる。しかし、僕は十二月の講義が終わったヒマを持て余す大学生。この地域に友人は多くいるが、高校を卒業して働き始めた友人もいる。そういう友人にも気を使って、集まるのは夜なのだ。  昼間はとにかくやることが無い。久しぶりに来た祖父母の家には、確かに昔読んだ本やゲーム機がある。懐かしいな、と思いながら一通りのものに触れたが、それは昨日で満足してしまった。  大晦日や、元日ならお参りに行ったり初売りに行ったりして賑やかな町でヒマをつぶすことも出来よう。でも、そうでもない日はこれといって楽しみもない。
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