2人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
そういうわけで特にやることも無いので、テレビをつけながらだらりだらりと過ごすしかないのだ。それにしても、この時期はお笑い番組が多い気がする。
ちょうどテレビには、臼の横で杵を振りながら面白いことをいう芸人が映っていた。
「ふふっ……」
シンプルなお笑いに思わず声が漏れてしまった。
「おっ、餅つきか」
気がつくと、後ろにおじいちゃんが立っていた。別に、テレビに映っている彼らは餅つきをしているわけじゃないけど……。
「餅、食べたいよなぁ。うちでも昔、良く作ってたな」
おじいちゃんはしみじみとした口調で話している。
「えっ、うちにも臼とか杵とかあるの?」
「昔はどこの家も、餅は家で作ってたな。最近はみんなスーパーとかで買ってくるけど、できたての餅はそれよりうまいぞ」
正直、この家に来てから食べてばっかりだったし、年を越しても食べてばかりになる予感がする。だから餅にはそこまで惹かれるものは無いが。……臼と杵か、暇つぶしにはいいかもしれないな、と思った。
「たぶん、蔵にあるだろう。だいたいのものはあそこに放り込んである」
「そういえば僕、あの蔵に入ったことなかったな」
「蔵の整理もしたいしな、久しぶりに見に行くか。昔取った杵柄だな」
最初のコメントを投稿しよう!