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私は爽やかに去っていく中谷さんの背中を見送り、少し余韻に浸った。
「食べないんれすか」
「食べる食べる」
既に弁当を開封してご飯を食べていた花宮くんの言葉に現実に戻り、私も弁当の蓋を開けた。
「僕からもお礼を言わせてください。ありがとうございます」
「別に良いって」
「トキランくん、見た目の割に重くて、それもキツかったんですよね」
「そっか、お疲れ様」
こんなにゆっくり休憩したのはいつぶりだろう……。だんだんと冷えてくる身体が少し心地いい。
しかし気付けば、先に弁当を開けたはずの花宮くんより、私の方が先に食べ終わっていた。彼は私が片付けに立つと、驚いた顔をする。
「食べるの早」
「あー……癖でつい。これでもゆっくり食べたつもりだったんだけど」
私は苦笑いで返した。彼はふーん、と軽く頷いた。
「そういえば、何で奥田先輩ってテントなんですか?」
「新人だからじゃない?」
「そっかぁ。いや、橋本先輩が言ってたんですけど、前のところで営業だったって。新宿店の営業ってスーパー凄いって話じゃないですか」
「……」
「ま、でも、僕はテキパキ動いてくれる奥田先輩とコンビ組めて良かったです!」
「う、うん。私も花宮くんと組めて楽しい。ありがとうね」
花宮くんは明るくてとても話しやすい。周りにお花が飛んでいる感じもあって、かわいらしかった。
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