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残りの休憩時間は携帯で暇をつぶそうと思った。
鞄を探っていると扉があき、黒崎が顔を出した。
「黒崎お疲れ」
「お疲れ様です!」
「お前らも」
黒崎はペットボトルの蓋を捻りながら言った。
「ダリ、化粧崩れてね?」
「はいはい、どーせ私は化粧ババアですよ」
「んなこと言ってねーだろ。営業なんだから、気にするかと思っただけ。暑かったから」
「……そっか」
私は黒崎の言葉に納得し、ここで化粧直しをさせてもらうことにした。ポーチから使い古したアイテムをテーブルに並べていく。ファンデーションなんて、割れてても気にしない。
「それにしても、今日のお客さん凄かったわ。勉強量が」
「勉強量ってどういうことですか!?」
花宮くんが身を乗り出して聞いてきた。
私はそんな疑問に答えた。
「家づくりの下調べがすごいってこと。他のハウスメーカーとの違いは勿論、建てた人たちのブログとかを研究してくる方もいるよ」
「じゃあ、こっちも正しい知識で答えないとですね」
「そうそう。花宮くんは新人だし、分からないなら知った被らずに『担当に聞きます』って言うと良いよ」
「なるほど!」
私たちの会話を聞いていた黒崎は、「意外だ」という顔をした。
「お前ら、いつの間に仲良くなったんだ」
「仲良く? まあ、花宮くんのコミュ力が高いって感じ」
「それはあるな」
「僕、褒められてますよね!」
なんだか平和な職場だな。以前のピリついた感じとは大違いだ。ここは居心地がいい。
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