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「別にあんたの部屋、汚くないじゃん」 「綺麗でもないだろ」 「まあ」  午後4時。  黒崎の部屋は特別汚いという訳ではなかった。家具家電は落ち着いた色で統一感があり、一定の生活感があるくらいだった。  洗濯物が散らばっていたのだろう。奴はそれを一気に抱えて、向こうの部屋に押し込んで戻って来た。  黒崎はソファに寝ころびながら言った。 「ひとまずキッチンだけでいいから」 「りょうかーい」  こんなやりがいのある仕事は嬉しいです、なんてね。私の出張お掃除BOXがうずうずしてますよ。  既に静かになった奴を見て、私は少し罪悪感にかられた。……昨日の飲み会で遅かったのかな。もう少し、気を遣えばよかった。文句を言いながらも手伝ってくれた黒崎には感謝だ。    キッチンの水垢、コンロの油汚れ、電子レンジのこびついた内側。掃除は、磨いた分だけ綺麗になるから好きだな。 「黒崎ぃ」 「ん」 「起きろ」  17時30分。  私はミッションをこなしたため、奴を起こした。  キッチンを見た黒崎は、綺麗になったシンクを見て「はあ!?」と声をもらす。 「めっちゃ綺麗になってる」 「えっへん。奥田さんに任せればこんなもんよ」 「スポンジでもあんまりだったのに」 「これは、みんな大好きクエン酸ですよ」  印籠のように自作のクエン酸スプレーを掲げると、黒崎は理解をしていないながらも感心していた。
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