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その人は、私と目が合うと、緩いパーマのかかった髪を揺らして軽くお辞儀をした。
「どうもです。僕、花宮涼太です。去年から入ったばかりの新人なんで、よろしくおねがいします!」
「こちらこそ。私もここでは新人だから、勝手を教えてもらえると嬉しいです」
「はい! まず、3階から行きますね」
私は花宮さんに着いて行き、メモを取りながら説明を受けた。
ここT駅前店は、3階建ての店だ。ショールームもたくさんあるし、接待部屋も勿論ある。この地域では大きい方に入る広さだ。
私が給湯器の使い方をメモに書き込んだ。すると花宮さんが驚いた顔をしていた。
「えー、休憩室の使い方もメモるんですか」
「もう一度聞かれたら、『前に教えたよね』ってなりますよね。私はみんなの手を煩わせる回数を減らしたいんです」
「真面目ですね。僕なんか何回も聞いちゃいますよ~」
「新人なんだし、間違いがあっても良くないからいいことだと思うよ」
腕を頭の後ろに回して笑う花宮さんにそう返事すると、彼はゆっくり腕を下した。
「タメ……」
「あ、ごめんなさい。つい」
「いやいやいや全然いいです!僕年下だし、それでいいです。みなさんもそうしてます」
「花宮くんもタメでいいよ」
「いやそれは流石に」
私も変な提案したかな、と再び彼に謝った。その後謎の謝り合戦となり、互いに噴き出して終わりを告げた。
そんなこんなで花宮くんとは普通に話すことになった。
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