1/1
16人が本棚に入れています
本棚に追加
/130ページ

 その人は、私と目が合うと、緩いパーマのかかった髪を揺らして軽くお辞儀をした。 「どうもです。僕、花宮涼太(はなみやりょうた)です。去年から入ったばかりの新人なんで、よろしくおねがいします!」 「こちらこそ。私もここでは新人だから、勝手を教えてもらえると嬉しいです」 「はい! まず、3階から行きますね」  私は花宮さんに着いて行き、メモを取りながら説明を受けた。  ここT駅前店は、3階建ての店だ。ショールームもたくさんあるし、接待部屋も勿論ある。この地域では大きい方に入る広さだ。  私が給湯器の使い方をメモに書き込んだ。すると花宮さんが驚いた顔をしていた。 「えー、休憩室の使い方もメモるんですか」 「もう一度聞かれたら、『前に教えたよね』ってなりますよね。私はみんなの手を煩わせる回数を減らしたいんです」 「真面目ですね。僕なんか何回も聞いちゃいますよ~」 「新人なんだし、間違いがあっても良くないからいいことだと思うよ」  腕を頭の後ろに回して笑う花宮さんにそう返事すると、彼はゆっくり腕を下した。 「タメ……」 「あ、ごめんなさい。つい」 「いやいやいや全然いいです!僕年下だし、それでいいです。みなさんもそうしてます」 「花宮くんもタメでいいよ」 「いやそれは流石に」   私も変な提案したかな、と再び彼に謝った。その後謎の謝り合戦となり、互いに噴き出して終わりを告げた。  そんなこんなで花宮くんとは普通に話すことになった。
/130ページ

最初のコメントを投稿しよう!