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6
私は完成予想図の隣に記されている担当の名前を見た。私と虎丸さんと……
「それにしても、江島さんはどこに」
「あっちです」
虎丸さんの顎が指す先に、江島さんと北島さんと砂嶋さん、そして真樹ちゃんがいた。
3人の男性――通称3島さんは彼女を取り囲んで、何やら楽し気に話している。
私も何となく察しはついた。3島さんは真樹ちゃんがお気に入りなんだ。
……確かに、真樹ちゃんは若くて細くて可愛らしい容姿をしている。しぐさも女の子っぽくて、世間が思う『かわいい』に当てはまっていると、素人の私でも理解できた。
――だからお前はダメなんだ。
――グズで、のろまで。
――おまけにデブ。最近太りすぎだろ。
(はあ……どうでもいいけど)
昔のことも真樹ちゃんのことも私には関係ない。考えたくない。そう思うようにして、私は再び作業を始めようと振り返った。
その途端、目の前にピンクの壁にぶち当たった。
「ぶへっ」
「くくっ、なんだその変な声」
ピンクの壁の正体は、トキラホームのマスコットキャラクターのトキランくんの着ぐるみだった。ただ、トキランくんの顔は無く、そこから黒崎の顔が飛び出ていた。
奴は汗を滲ませて言った。
「9月と言っても流石に暑いよな」
「熱中症にならないようにね」
「まぁでも、コレ被るの花宮なんだけどな」
「なんでアンタが着てんのよ」
「ダリを驚かせたくて」
「性悪」
私が呆れていると、背後から真樹ちゃんがやってきた。
「え~明センパイは着ないんですかぁ。可愛いのに」
「花宮も経験ってことで」
新人だし、まずはマスコットからにはなるよね。花宮くんがんばれ。
私が心の中で手を合わせていると、真樹ちゃんが黒崎に引っ付いた。
「明センパイ。私の分の仕事は終わったので、そちらお手伝いします!」
「粗品運びは重いぞ。まずテントやってあげてくれ。まだ出来てないみたいだし、粗品よりは軽い」
「はい! ……あ、私もう一つ仕事あるんでした! なので、それが終わったら手伝いまーす」
真樹ちゃんはそう言った後、黒崎に手を振って冷房の効いているモデルハウスに消えて行った。
虎丸さんは遠くからやってくる江島さんを見ながら口を曲げていた。
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