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なんとか会場準備が終わった。
私たちは中谷さんの周りに集まり、これからの動きを確認する。
「午前中は黒崎さん、橋本さん、北島さん。午後は砂嶋さん、江島さん、虎丸さんで会場に待機してください。私は常に会場にいますので、社の方でなにかあったら携帯に連絡を」
「はい」
「花宮さんと奥田さんはテントです。暑いので十分に気を付けて、30分ごとに交代でモデルハウスに入ってくださいね」
「はい」
もうすぐで会場オープンになる。
午後の担当の人は会社に戻り、私も配置に着いた。花宮くんは着ぐるみに着替えるため、一度モデルハウス内の待機室へ向かう。
私が最後のチェックをしていると、真樹ちゃんがやってきた。
「あっついですね~お化粧が崩れます」
「そうですね」
「センパイは化粧しててもしてなくても変わらなさそうだからいいですよね。私なんか、ココにニキビもできそうですし、コンシーラーで上手くごまかせられないです」
「そうなんですね」
私は机にペットボトルを並べた。ラベルが見える方がいいだろう。
真樹ちゃんは手で自身を仰ぎながら言った。
「私分かんないんですよねぇ。新宿店の営業で活躍していた奥田センパイがなんでテントなのかなって」
「ここでは新人も同然ですから」
「新人だなんて謙遜しすぎですよぉ。私より年も力も上なんだし、『ですます』は、いらないですよ!」
「はあ」
「それにしてもホントに、ここの新人ってだけで任されないんですかね」
真樹ちゃんの声のトーンが下がった気がした。
私は思わず彼女の眼を見た。
真樹ちゃんはゆっくりと紅の乗った口を開けた。
「だってセンパ……」
「じゃじゃーん! トキランくんの登場でーす!」
真樹ちゃんの声をかき消したのは、トキランくんの身体をした花宮くんだった。頭部がぐらつかないように抑えながら階段を降りてくる。
真樹ちゃんはトキランくんを見て手を振った。
「明センパイのトキランくんもいいけど、涼太くんのトキランくんも超かわいい~。頑張ってね! ちゃんと涼みに来るんだぞっ」
「やっぱ僕のトキランくんもいいっすよね! 了解でーすっ」
威勢のいい敬礼をして、花宮くんは真樹ちゃんを見送った。
私は少し離れた駐車場が開いたところを確認した。
「花宮くん、お互いがんばろう」
「はいっす!」
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