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12時30分になった。中から北島さんと真樹ちゃんが来て、昼休憩の為の交代をしてくれた。
私たちは軽く引継ぎをして、二人に頭を下げる。花宮くんの後に続いて控室に向かおうとすると、真樹ちゃんが困ったような顔で話した。
「修斗副店、ビックリしてましたよ~。一応、私が報告しておきましたぁ」
「?」
控室には、中谷さんがいた。黒崎はまだお客さんと話しているらしかった。
中谷さんは、私たちに弁当を渡してくれ、正面に座る。
「午前の部、お疲れさまでした」
「お疲れ様です」
「橋本さんから先ほど聞きました。トキランくんの件、奥田さんの指示だったそうですね」
「はい」
私は中谷さんの質問に素直に頷いた。
トキランくんのことは、中谷さんに伝えようと思っていたが、なかなかタイミングが合わずできなかった。真樹ちゃんが伝えておいてくれたらしい。
中谷さんは神妙な面持ちで私と花宮くんを交互に見て言った。
「同じく今日イベントを開催していた他の会場で、マスコットを着た人が倒れたとの連絡が入りました。勿論同じ条件で休憩をとっていましたが……」
花宮くんは、中谷さんの言葉に顔色を変えた。
「じゃあ、僕ももしかしたら――」
「ええ。あのまま続けていたら花宮さんも倒れる可能性が十分にありました」
中谷さんは険しい表情から一変、優しい普段の顔に戻った。
「奥田さん、よく彼を止めてくれました。本当は私が管理しなければならないことでした。すみませんでした。重大事故にならなくて良かったです。本当にありがとうございます」
「あっ、いえいえいえ。私こそ、独断で動いてすみませんでした。何もなくて、よかったです」
場に和やかな雰囲気が流れたとき、私のお腹がなってしまった。空気読めない腹め……!
花宮くんは私を見て必死に笑いをこらえている。中谷さんは口元を軽く緩ませて微笑んだ。
「お時間取らせてしまってすみません。10分延長して休憩してくださいね。外の二人には私から伝えておきます。午後も、この調子で引き続きよろしくおねがいします」
「はい!」
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