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夏美は大学2年生。今は夏休み中だ。それのきっかけは本屋に行った時、一人の人物に出会ったことだった。彼女は、私に気付くと笑顔で話しかけてきた。
「夏美じゃん。なんか久しぶり。夏休みはどう?」
夏美は答えることができなかった。
「あの。どちら様ですか?」
夏美がそう答えると、目の前の彼女は顔をしかめた。
「なんの冗談?冗談だよね。いくら忘れっぽい夏美でも親友忘れるはず無いっしょ。」
そう言って笑顔を向けられ、夏美もそれに合わせた。何かが変だ。私は彼女を知らない。
家に帰る道、ふと自分が肩に掛けているバックに目がいく。なんの本を買ったんだっけ。急に不安になってくる。急いで確かめると、研究テーマに関連した、よく知った内容の本が出てきた。ほっと安心する。そう。私は夏美だ。この研究も夏美が小さい頃から興味を持っていた分野のもの。いや、まて。小さい時はどんなだっただろう。中学校、小学校・・・・・・。その頃の記憶が何も出てこない。疲れてるのかな。どうも、もやもやする。なにか大事なものが抜け落ちてしまったような、心もとない感じがする。家につく。見慣れた、いつも通りの我が家だ。
「夏美ー。さっきあんたの彼氏から電話来てたわよ。ほら、あんた携帯忘れてったでしょ。」
キッチンから母が叫ぶ。私は一瞬固まった。彼氏?私に彼氏なんていただろうか。おかしい。絶対に何かがおかしい。その日の夕飯は、どうも味がしなかった。きっと疲れてるんだ。今日は早く寝よう。夏美はそう自分に言い聞かせて、早々にベッドにはいった。
次の日の朝。目覚めてすこしホッとする。いつも通りの朝だ。ベッドに身を起こし窓の方を見る。青空が見える。いい天気だ。トクリ、心臓が大きく動いた。今、窓に写っていた。ナニ?ゆっくり、恐る恐る窓の方を見る。
ガラスに全く知らない自分の顔が写っていた。
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