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「お帰りなさい」
ドアが開いて、遥花が飛び出してきた。オンラインではない現実の遥花。夢にまで見た本物の遥花。抱きしめると、柔らかくて暖かい。
「ただいま」
久しぶりのキス。なんだか、夫婦なのに照れてしまう。遥花の顔を眺めていると、遥花が恥ずかしそうに笑った。
「老けたでしょう」
「そんなことないよ。きれいだ」
「嘘ばっかり」
遥花はふふっと笑うと俺の手を引いた。
「それより、疲れたでしょう。お風呂、それとも」
「まずはのんびりしたいな」
「では、どうぞ」
遥花が先に立って部屋を案内してくれた。
「変わったでしょう。最近の部屋って、こんなのが流行っているの」
まるで森の中のように緑に覆われている。机も椅子も床から生えているように見える。
「生きている素材なんですって。ちょっと、私には不気味な気もするんだけど。自動清掃、修復機能があるので家事は楽だし、メンタルにいいらしいの」
遥花はどんどん新しいことを取り入れている。時代についていくことをサボりがちな俺はもっと、頑張らないといけないなと思う。
腰を下ろすと、椅子は柔らかく変形して体重を分散させた。これはいい。ぜひ、運転席のシートに取り入れてもらいたい。
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