攻め視点

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 ベッドの傍らにあるゴミ箱に目を向ける。確かに丸まったティッシュがいくつか捨ててあった。後処理までやらせてしまって申し訳なくなる。 「イル、怪我をしてないかだけ確認させてくれないか?」 「怪我ですか? してないと思いますが」 「心配だから俺が確認したい。服を脱いでくれ」 「なぜ、服を脱ぐんですか?」 「脱がないと確認できないだろう」  イルが首を傾ける。俺も同じ方向に頭を倒した。  口を大きく開けられる。 「何をしている」 「怪我を見るって言ったから。キスって怪我するんですか?」 「キス?」 「はい」  頷くイルに、胸を撫で下ろす。イルはキスの事を言っていたのか、と安堵した。いや、酒の力でキスをするのもどうかと思うが、抱いたわけではなかったようだ。念の為に確認しよう。 「キスだけだったんだよな? その先はしてないんだな?」 「キスの先って何ですか?」  純粋な瞳に見つめられて言葉に詰まる。大事に育てすぎて、そこまでの知識がないのだろうか。何も知らない無垢な愛おしい存在に、自分の欲を吐き出していなかった事に安心した。成人するまでに知識は得てもらおう。  酒は二度と飲まないと決める。美味しかったが、残った酒はオリヴァーさんに返そう。 「イル、酒場で朝食を取ろう」 「アランさん、答え貰ってませんよ。キスの先って何ですか?」 「……そのうちな」  イルの頭を撫でると、うー、と唸る。撫で続ければ機嫌が良くなったようで、着替えてきます、と自室に向かった。
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