14人が本棚に入れています
本棚に追加
今日は早めに切り上げて、アランさんと住む家に帰る。遺跡の中は埃っぽいし、戦闘で汗はいっぱいかいたし、早くシャワーを浴びてさっぱりしたかった。
アランさんに先にシャワーを浴びてもらう。
ギルドの兄さんたちに『大人は好きな人とシャワーもベッドも一緒』と聞いてから、俺はいつもシャワー室に張られた結界と戦っている。
それを聞いた日に一度アランさんがシャワーを浴びているところに入った事がある。すぐに追い出されて結界を張られた。アランさんがシャワーを浴び終わるまでに結界を破る事が俺の目下の目標だ。
狭い脱衣所で剣を振り回すことなんて出来ないから、身体だけで突破しなければならない。
アランさんは剣だけでなく魔法も一流だ。攻撃魔法も補助魔法もお手のもの。風属性の魔法と相性がいいらしい。唯一回復魔法は使えない。
俺は回復魔法だけでも使えるようになりたかったのに、全く才能がなかった。だからアランさんが背中を任せられるようになる為、必死に剣の腕を磨いた。
拳を結界に叩きつける。ヒビすら入らない。ひたすらに拳や蹴りの連撃を浴びせても、うんともすんとも言わない。これのおかげで最近、体術の精度が上がった気がする。
シャワー室の扉が開き、アランさんが無表情で俺を見下ろす。着替え終わると結界が解かれた。
「イルもさっぱりしてこい」
「……はい」
今日もダメだった、と項垂れる。俺に構わずアランさんは脱衣所を後にした。俺はいつになったらアランさんと一緒にシャワーを浴びられるようになるんだろ。
最初のコメントを投稿しよう!