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「貴女に会いたい」
そう言って貴女は重く静かにこのガラスに拳を叩く。
ここに居るのは貴女と研究ポッドに閉ざされた貴女のクローンだけ。
貴女は喋れないクローンを見つめては項垂れて、それを繰り返して。
けれど、貴女が会いたいのは本当に貴女なのかしら。
双子の妹の名前を何度も口でかたどって。
ここに居るのは私と私だけ。
全く同じ遺伝子だけど。
貴女は私できっとあの子じゃない。
貴女はいつしか凍りつくように怯えるように、目線をこちらに釘付けにしていた。
貴女は言った。
『さようなら』
――貴女は何度も失敗しているでしょう。パラドックスは、存在が許されないの。きっと。
――床には研究ポッドの壊れた破片が散乱し、一人の息絶えた女性が倒れている。
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