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私、どうしたんだろう?
「せっかくだし歩かない?」
その言葉に誘われ、私と夕姉はあぜ道を歩いていた。集落を南に行くと、田んぼが広がっている。水に満たされた田んぼには、青々とした稲が並んでいた。
山間から何やらジジジという声が聞こえる。妙に音が大きく気になる。
「なんの音だろう?」
「**じゃない?」
まただ。またなぜか、聞き取れない。夕姉は私の様子に眉をひそめた。
「ほら、アブラゼミだって」
「アブラゼミ」
ああ、そんなのもいたなぁ。そう思いながら、頷くと夕姉はますます怪訝な表情を浮かべた。
「どうしたの? なんか顔色悪いよ」
「そんなことないって。それよりもほら、あれ」
話を逸らそうと、稲の上を飛んでいる***に目を向けた。
***?
今私は、何を指さしたんだろう。***ってなんだ?
「朝美、オニヤンマがどうしたの? ……朝美?」
視界が回る。私、どうしたんだろう。
痛む頭を抑え、私は地面に座り込んだ。
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