1人が本棚に入れています
本棚に追加
人類最後の願い
隕石の衝突が確定した時、人々は生きるために抗った。その一方で、もし人類が滅亡しても、その生きた証が残るよう努力した。
そこで紙や長期保存用のディスクを使って人類の歴史、文化、技術、あらゆる知見を記録し、保存を行うという計画が、各地で立案された。
しかし地上に保存していては、隕石衝突の影響で破壊される可能性があった。また仮に人類が絶滅してしまえば、それらのデータを参照できなくなってしまう。
プロジェクト・クリオはそれらの懸念に応えるため、考案された計画だった。
この計画はAIを活用して、人類の知識を伝えるというものだった。
プロジェクト・クリオは、まず人間が経験した情報を可能な限り搭載したAIを用意し、人工衛星に組み込んで外宇宙に打ち上げる。そして遠く、地球を離れた宙へと飛ばす。
もしこれを見つける者がいれば、その者の言語に合わせてAIが情報を伝える。
この計画の肝は、伝える相手が必ずしも人類である必要がないということだ。高速で飛翔する人工衛星を、手に入れるほどの技術がある生物であれば、きっと人類が成し得た知見を受け取ってくれる。それがこの計画の目的だった。
そしてAIであれば、相手がどのような文明であろうと、伝わるよう善処するだろう。
宇宙にいれば、隕石の被害から免れる。AIであれば人類の代わりに人類のことを伝えられる。
もし人間が絶滅したとしても、人類の歩みを宇宙に残したい。
人類がたどり着けた知識を、後世に託したい。
この計画には、人類最後の願いが込められていた。
最初のコメントを投稿しよう!