最後のロケット

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最後のロケット

 7、6、5。メインエンジン着火。4、3、2、1。  リフトオフ。    秒読みが終わると、轟音をあげてロケットの巨体は宙へ投げ出される。  ロケットブースターから放たれた爆炎が、真っ赤な渦となり、ロケットを押し上げる。発射台からは突風の如き勢いで白煙が放出され、排気口より吐き出される。  深宇宙探査機SAKUYA12号を載せたI3ロケットは、種子島宇宙センターを2078年3月2日13時00分、定刻通りに打ち上げられた。  ロケットは地球を飛び越え、天高く舞う。目標は4.2光年離れた惑星、プロキシマケンタウリb。生物が存在する可能性が有望視された惑星だった。  大気圏を抜け、真っ黒な空が広がる宇宙空間へロケットはたどり着く。すでに種子島は小さくなり、太平洋の只中に浮かぶ一雫となった。複雑な雲の模様と入り組んだ大陸、そして海の青がロケットの外殻に反射する。  次第にその光景も遠ざかり、星の世界に投げ出される。  地球に。そして太陽系に背を向け、ロケットは深宇宙へと旅立っていった。  そして二度と、地球の光を浴びることはなかった。  これが種子島宇宙センターが打ち上げる、最後のロケットとなった。  打ち上げから一ヶ月後。  2078年4月13日、北アフリカに巨大隕石が衝突。  この隕石により人類は絶滅した。
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