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カフェのドアを開けると、チリンとドアチャイム。 若い店員の水野(みずの)(めぐみ)が、テーブルを拭いている所だった。 「水野さん、お客さんだ」 ショートボブの細身に、エプロンとバンダナ姿の恵は、こちらに向いてニコリとして頭を下げる。 「まあ、座ってくれ」 俺たちはテーブル席に座る。 「こぢんまりとしていいお店ね」 ひとみちゃんが、周りを見渡した。 「お! ヨット部品も売ってんのか」 「ああ。地元のヨット乗りを相手に、ヨット部品を売ることもしているんだ」 「ということは、まだやってんだな。ヨット」 「いや、ヨットは、海洋系の高校で教えたぐらいで、もう乗ってないよ」 「そっか、そういやお前、学校の先生やってたんだな。60で定年したのか」 「ああ、で、今はここをやってる」 「タバコいいか?」 海藤がポケットからタバコとライターをテーブルに置いた。 相変わらずのヘビースモーカーか。 俺は、カウンターに向かって 「おーい! 水野さん。お客様がタバコはいいかって聞いてますよ」 (めぐみ)が、小走りでやって来て手に持ったタブレットを操作した。タブレットから女性の音声が流れる。 【お客様、申し訳ありませんが、店内は禁煙となっております。お飲み物を美味しく召し上がっていただきたいので、ご理解ください】 恵は深々と頭を下げる。 「ああ、そう。はい、わかりました」 頭を掻く海藤。恵は、カウンターに戻って行った。 「てなことで、店内禁煙だ」 「っていうか、あの子、何でタブレットを使うの」 ひとみちゃんが(いぶか)しむ。 恵が、水を運んで来た。3人分のコップを置くと、再びタブレットを操作する。 【ご注文をお伺いします】 タブレット音声で、御用聞きだ。 「あ、じゃあ俺は、ホットコーヒー」 「私は、レモンティー。ホットで」 「水野さん、先生は熱いお茶でいいや」 注文をタブレットに入力し終わった恵は、画面をタップした。 【かしこまりました。少々お待ちください】 微笑んで会釈。カウンターに引き上げて行った。
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