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「お金に困っているんでしょう」
「!」
「そして貴女は母を軽蔑しているわね」
“そんな未来しか選べなかった十九の貴女ではなく、今の貴女はまだ染まってはいないはずだから”
「そんなこと」
「愛していることと軽蔑していることは同時に存在することもあるの、おかしくないわ。だからこそここで学びなさい。そして淑女になりなさい」
「淑女に……?」
“ニコラウス殿下へ行き着く前にも散々色んな男性と関係を持っていた貴女は男爵令嬢であり娼婦そのものだったけれど”
「貴女が目指すのは貴女の母ではないわ。間近で私を見て習い、そしてたった一人だけを篭絡なさい」
流石に中身は別として十歳の少女である私が『篭絡』なんて言葉を使ったためか、後ろに控えていたエマの肩がピクリと動いたが、どうやらミルシュカには届いたようで。
「……私は、お父様がいるのに色んな男の人を家に連れ込むお母様が信じられません」
ぎゅ、と自身のスカートを握ったミルシュカはさっきまで不安気に揺れていたその瞳に意志を宿らせ私を見つめる。
「よろしくお願いいたします、ビクトリア様……!」
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