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21話:看病くらい致しますわ
私は客間をノックする。
「ネモローサ様、水差しお持ちしました…お加減は…」
扉をゆっくり開くけれど、なんの返事もない。
どうやら眠っているようです。
私はベッドまで行くと、すぐ近くのテーブルに水差しを置く。
そしてネモローサ様の顔を覗いた。
「綺麗なお顔ですわね…黙ってればほんとイケメン
逃げてった人って、この人の口の悪さも嫌だったんじゃないかしら
だって、それ以外…」
悪いところが見当たらない…そこまで言い切ることはできなかった。
「病人に悪口言うなんて、あなたも大概な性格ですね」
ネモローサ様が喋り出したからだ。
「あ、聞いておられました?」
「目を閉じていただけで、寝てただけではありませんので。」
ネモローサ様はいや見ったらしく言うけれど、まぁ口喧嘩する元気もなさそうですので私は相手をしないことにした。
「…お水もってまいしました、飲めます?
もし食欲がありそうでしたら、パンがゆをお持ち致しましたのでよろしければ」
「食べさせてくれるんですか?」
「ご自身でどうぞ」
「じゃあ、後でいただきます。」
そんな適当な話をした後、ネモローサ様の顔をもう一度見る。
熱で顔が真っ赤。
ただごとではなさそうに見えます。
「ネモローサ様、風邪ひくまで一体何をしていたのです?
雨に降られたから…ではないですわよね。」
「別に…少し見回りをしてただけですよ。
昨日のことがあったので。」
昨日…オペラの後の弓矢。
確かに、あれは普通のことではない。
ネモローサ様も昨日のことで動く仕事があったのかもしれない。
もしかしたら、単純にお疲れが隊長として現れたのかもしれない。
「昨日は…ありがとうございました」
私は改めてお礼を言う。
命の恩人に対する感謝はしても仕切れない。
「改めて言われるようなことではありませんよ。
あなたこそ、だいぶ怖い思いをしたのでは?」
「…怖いというか…非現実的すぎてピンときてないのです…
だから、昨日の出来事は小説にして消化することにしました。」
「そんなことで解消される恐怖ではないと思うのですけどね。」
ネモローサ様は私を見るとため息を吐いた。
でも、その口元が笑っているように見えたのは私の気のせいだろうか。
まぁそんなことは別にいいのだけれど。
「今日1日は泊まって行ってください。
責任持って看病致しますわ。」
「サルビアが看病してくださるんですか?」
「昨日のお礼ですもの。このくらいは」
「ではご好意に甘えさせていただこう、夕食は食べさせていただけると…」
「あっつあつのパンが湯を口いっぱいに突っ込んで差し上げますわ。」
こんな感じのやりとりを、この後も何度かした。
流石に食事でアーンはしなかったけれど、欲しいものを用意したり水をコップに注いだりすることはした。
一応この日はネモローサ様のお部屋で夜の番(ただ客間を借りて小説書いてただけ)をしたりしました。
その甲斐があったのか、はたまた関係なかったのかはわかりませんが、
次の日、ネモローサ様はすっかり元気になられました。
「すみません、お世話になってしまって。
しかもなんか寝ずに看病してくださったみたいで」
「お気になさらないでください、これも助けていただいたお礼ですわ。」
「ではそろそろお暇して…」
そんな別れの挨拶をしていた時のことでした。
「お嬢様!大変です!」
「ど…どうしたの?朝っぱらから」
「それが…お嬢様のお部屋が、何者かに荒らされて!」
それを聞いた私たちは急いで私の部屋に向かいました。
そこでみた光景は予想より酷かった
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