27話:真意が見えませんの

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27話:真意が見えませんの

私は誰もいないテラスで風に当たりながらシャンパンを一口飲むと、さっきのことを考える。 主に、誤解の解き方を。 なんか…あそこまで『婚約者』って公共の場で言われてあんなに祝福されたら… 前言撤回が非常に難しいですわ。 私まだ、OK出しておりませんのに… というかここにいるのだって、成り行きですのに… いえ、匿ってくださっているのは感謝してるんですけれども。 ネモローサ様は何が目的なのでしょうね…あぁ結婚して公爵になることでしたっけ… 確かに、この状況ではネモローサ様が新しい婚約者を探すのは難しいですわね。 でも、保留にしてるのにこんな断りにくい強引な手を使わなくてもよろしいのではなくて? そこまでして私じゃないとダメな理由って…何かあるのかしら… テラスから月明かりに照らされる中庭を見つめる。 風が少し吹いて、その風によって草木がザワっとなる音が聞こえる。 …そんな心地よい音を聞いていたら…少し考えるのが面倒になってきましたわ… 私は少し目がしょぼしょぼとしてきたのを感じ目を擦る。 そんな感じで黄昏ていると、誰かの足音が聞こえてきた。 誰かがテラスの中に入ってきたらしい。 ネモローサ様かと思って振り返ると 「サルビア」 残念なことに別の人間だった、 でも、見知った顔ではある。 「プランテス様…」 白い服を身にまとっているせいか、暗闇ではとても目立つ格好だ。 「なぜここに…」 「招待されたからな」 あぁ、そうか。 貴族の皆様が呼ばれてるんだもの、伯爵だってここにいておかしなことは何もない。 「何か御用ですか?」 私は伯爵を見つめる。 伯爵は私を見つめ返すと質問を私に投げかける。 「今日はネモローサ様のパートナーか」 「頼まれましたので。」 「本当にこのまま、公爵と本当に結婚するつもりか?」 そういえば…最後にあったのはあの民家の家からの帰りでしたわね。 その時になんかそんなような話になったような…色々ありすぎて覚えてない… というか、思い出すのに頭を使うのが、今は少しめんどくさい。 「なぜ、そのようなこと気にされるのです?」 私がツンッとした態度を取る。 そのことが気に入らないのかイラついた表情を見せると 私に近づき手首を掴み、痛いくらいかなりギュッっと強く握る。 「は…伯爵?」 「どうしてわからない? そんなのお前のことを昔から想っているからに決まってるだろ!」 普通、こんなこと言われたら…好きな相手だろうが、そうじゃない相手だろうが多少はときめくのだろう。 でも、彼からの言葉にそれは感じない。 感じるものは…恐怖と…それ以上の違和感。 「…本気で言ってるのですか?」 「縁談持ちこんだのが何よりの証拠だ。」 伯爵からそう言われたときに、私はふとネモローサ様のことを思い出す。 なぜかはわからないけれど、何となく二人を比較してみると違いが浮き彫りになったような気がした。 「では、なぜ私なのですか?」 「相手を想う気持ちに、理由が必要か?」 ある必要は、ないかもしれない。 それならそれで構わない。 ただ…想ってたにしては、言葉は薄いし表情が変な意味で固い。 彼の行動は、恋愛で嫉妬する人の行動なのだとしても、 表情は恋愛とは関係ない別の焦りの感情を浮かべてる気しかしない。 だって、他の女性に浮かべていた朗らかな表情ではない。 まだ、何か目的があって行動してると言われた方が納得がいく。 「…あなたは…何が目当てなの?」 「何?」 「あなたからは、私へのともに持ちを感じないのよ」 「それは、あの公爵も一緒だろ!」 「だからこそ、わかるのよ。」 気持ちがないはずなのに、侯爵様は毎日アプローチをしに屋敷にきた。 彼からは何もない。 確かに、彼の方の縁談は断ったのだから当然だわ。 でも、昔から想ってるなら、昔からアクションを起こしているはずだし、 本気で思っているなら、縁談を断った後もっと食い下がるはず。 だいたい、あの路地での後ですら今日まで何もなかったじゃない。 だから、彼の言い分はウソ。 「あなたのことは、信用できない。」 私はキッパリとそういった。 そこまで言えば、怒るだろうと予想していたので身構えた。 でも 「…」 小声で、私に聞こえないくらいの声で、何かしゃべっただけだった。 逆にそれがすごく不気味で…この場から離れたくなった。 「いい加減放して…」 そう言って私はプランテス様の腕を振り切ろうとしたけれど、 なかなか上手く力が入らず、それが叶わない。 そして片方の手で持っていたシャンパングラスが割れる音が聞こえた。 どうやら力が抜けて、グラスを落としてしまったようだ。 気がつく、少し視界がぼやけていることに。 おそらく、プランテス様に腕を握られてることが原因…ではなく、 さっき飲んだシャンパンの酔いが回ってきたのだろう。 その証拠に、気が抜けたのか腕を掴まれたまま地面に膝をついてしまった。 そんな時 「よくお会いしますね」 別の誰かの声が聞こえました。 その後、何か会話をしているのはわかったのですけれど それ以上のことはわからず意識が途切れました。
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