28話:私が狙われた理由…実は…

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28話:私が狙われた理由…実は…

「ここ…は…?」 目を覚ますと、見知らぬ天蓋が見えました。 その後に 「目が覚めましたか?」 ネモローサ様の声が聞こえたので顔をそちらに向け起き上がる。 「…ネモローサ様」 「公爵邸の客間です」 「そうですか。」 「そんなことよりご気分は?」 ご気分…? 私は首を回したり肩を回したり、手を動かしたりしたけれど 特に何もおかしなところはなかった、それどころか… 「…めちゃくちゃスッキリしてますわ。」 私がいうとネモローサ様は『でしょうね』と言って呆れた顔でそう言いました。 どうやら、昨日のパーティーで私が飲んだシャンパンに、ごく微量の睡眠薬が盛られていたらしく、 それであの後テラスで眠ってしまったようなのです。 つまり、ぐっすり寝たからスッキリした…ということだそうです。 体調に影響はないとのことで安心ではあるのですけれど… ネモローサ様にテラスで抱えられて公爵邸まで運んでくださった上に介抱していただくとは… 申し訳ないですわ。 「でも…毒とか媚薬ならまだわかりますが…睡眠薬?」 「…思い当たるも可能性はあります…でも…その前に一つ確認したいことがある。」 「なんでしょう?」 ネモローサ様は机の上に置いてある私のノートに手を伸ばす。 それは、ネモローサ様をモデルにして書いた小説が書いてあるノート 「申し訳ないが、読ませてもらった。」 「ちょ、勝手に…」 やってしまった。 もう少ししっかりした場所に隠しておけば… 勝手にこんな小説書いてたなんて知られたら、怒るわよね… 私は両手で顔を覆いながら、指先の隙間からチラッとネモローサ様をみる。 しかし、ネモローサ様は怒ってるでもない様子で、口を開く 「なぜ知っていた」 「え…」 「なぜ、過去私が婚約した人数が、8人だと知っている?」 「…8人…だったのですか?」 「知らなかったのか?」 「えぇ、8は思いつきの人数ですわ。」 振られまくればいいんだ…と思ってたので多めに書いたのですが、 昨日の女性が3人目がどうとか言ってたのでてっきり4人くらいだと思ってましたわ… まさか倍だとは… 私は何とも言えない気持ちになったけれど、その気持ちには気がつかないふりをしました。 「これを書かれたのはいつです?」 「ネモローサ様が縁談を持ってこられる半月ほど前の夜会の夜ですわ」 「…」 ネモローサ様は何かを考えている様子を見せる。 「私は…あなたに謝らなければいけないことがある。」 「謝る?」 「男爵領に赴いていたのは、魔法持ちの人間がいると言う情報を聞き保護に向かったこと、 そして、行方不明事件の調査を行うためでした。」 「それは…察しておりますわ。」 というか、ネモローサ様が男爵寮で仕事してることは既に存じておりますし、 仕事をしているということは家業の魔法持ち関連でしょうし 仕事に無理言ってついて行って現場見てますし。 そんな今更の話、何だというのでしょう。 私はネモローサ様の話の続きを待つ。 「その調査の途中、男爵家の誰かが魔法持ちらしいということがわかった」 「え、うちの誰かが…ですか?」 「そう…なぜわかったのか理由は今は省くが… とにかく魔法持ちとわかった以上、平民貴族問わず、公爵領で保護しなければならない。 こちらとしては一刻も早く魔法持ちが誰かの特定をしたかった。」 なるほど、屋敷に入るためには何か理由が必要。 しかも一人一人を確かめるためには、親密な関係になった方がいい。 だから私に縁談を持ち込んだと…そう言いたいわけですわね。 確かに仕事の話だけでは限界だ。 それなら縁談ということにした方が、縁談を結ぶ娘はもちろん、 その兄弟、使用人との接触も容易くなる。 なるほど、噂以外で私にこだわってた理由がようやくわかりましたわ。 ネモローサ様の説明でそこはスッキリしましたけれど… 「それで、なおの方持ちが誰かわかったのですか?」 肝心なのはそこでした。 結局それが分からなければ意味がないですもの。 「石の反応が微妙だったので時間はかかりましたが、 それがはっきりしました、あなたです。」 ネモローサ様にそう言われると、私は指を刺される。 一瞬意味が分からずキョトンとしてしまいましたが… 「魔法持ち!?私がですか!?」 ありえない発言に驚いてしまう。 「そんなはず、あり得ませんわ私に魔法の発現なんて」 首をブンブン振りながら否定するも、ネモローサ様は発言を撤回しない。 「そう、少なくとも目に見えたり痕跡を残すものではない。 力は弱く知らなければ気が付かない魔法だ。」 「どう言うことですの?私の魔法は…なんなんですの?」 「最初は、予言の能力かとも考えたが…小説に書き留めているにもかかわらず、 あなた自身は皇女様の専属医者の事と、私の婚約者の人数のことは知らなかった。 そして、ここまで一緒にいて未来が見えるような話をあなたから聞いたことがない。 そこから推察するに…あなたの魔法は『小説で書いたことが現実になる』ことだ」 ネモローサ様は私のノートをトントンと叩きながらそう断言した。 しかし、やっぱりそれはありえない。 「…ありえませんわ 本からキャラクターが飛び出てきたこともありませんし、妖精が現れたこともないですもの」 「それも君が魔法持ちだと気付かれなかった要員だろう。 君のその魔力はそこまで強くはない、だから対象物も限定的なものに限られる 君の場合は『実際に存在する人物をモデルにして作品を作った場合』 滅多に見つからないタイプの魔法だ。 その証拠に、私をモデルに書いたこの小説、いくつか私のみに実際に起こってる」 「でも、あまりにも細かいことばかりですわ。偶然では? ネモローサ様の婚約者の人数だってたまたま…」 「8人目に婚約破棄されたのは、あなたの言ってた夜会のあった次の日ですし、 公表されていないはずの皇女様の専属医者のことを言い当てている」 「まさか…」 「それでも信頼できないのであれば、実在する人間をモデルに作品を描いてみてください。 なんなら、その私をモデルに書いた小説の続きでもいいですよ。」 「そんな急に!」 「プロを目指すならできるだろ?」 そう言われてしまうと…断れませんわ。 仕方ないですわ、ありえない設定で物語書いて納得してもらいましょう。 私は紙とペンを受け取ると、私はある人物の物語をサラサラと書き連ねた。 「書けましたわ。」 「ほう…いったいどの様な内容を書いたのか…」 「まぁ、正直こんなことが実際に起きたら信じてもいいですわ。」 私はカンニングされにように紙を伏せる。 とはいえ、ここに書かれたことが起きることはないでしょう。 だって… そう思った時、客間の扉がバンッと開いた 「お嬢様!」 見知った顔聞いたことのある声…それは 「あ、アンナ!?」 屋敷にいるはずのあんなだった。
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