31話:お望み通り力を見せて差し上げますわ

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31話:お望み通り力を見せて差し上げますわ

「売買の方は知らないが、まぁ誘拐の方は認めよう。 確かに、力の強そうな魔法持ちは集めていた。 戦争で大いに役立ってもらわないといけないからな」 「当時のネモローサ公爵は、あくまで国を守るため あなたみたいに英雄になりたいなんて理由で魔法持ちを集めて、駒のように利用しているわけではないわ!」 「もたらす結果はどちらも同じではないか。」 「君がいれば、僕の計画は完璧だ! さあ、俺の未来を予言しろ!早く!」 伯爵は、私の顎を片手でクイって持ち上げ自分の方を見るようにする。 彼の顔は、かなり邪悪な顔をしていた。 まぁ、他にいい感じの女性がいながら縁談を持ち込んだ時点で分かっておりましたが、 結局この人に対する私への思いなんて、この程度だ。 「なるほど、私を妻として迎えたかった理由がそれなのね」 「その通りだ」 「予言をしたところで、あなたの望む未来かどうか…」 「口答えはいい、早くしろ。」 有無を言わさない強い口調で遮られる。 私は、ため息をついて伯爵の方を見る。 「…縄を解いて、紙とペンをくださいませ」 と彼に要求をした。 「そんなものを何に使う、逃げるつもりか?」 「予言が聞きたいのではなくて? 私の力はあまりにも弱いので、紙に書き記さないと無効になるのですわ。」 「それが、本当である証拠がない。」 「なら、あなたは未来を知ることができないわ。」 私がそう言うと、彼は渋々な話をほどき、頭とペンを渡してくれた。 私はそれを受け取ると、ニヤリと口を歪める。 「…よかった…まだ特定できていなかったから、 物語の最後を書くことができませんでしたの。」 私はそう呟くと、スラスラと彼のこの後の物語を作り上げて彼に話す。 「その日、私は公爵邸を離れることになりました、 目立たないように安い馬車で帰ることになりましたが、仇となって襲われ捕まってしまいました。 ネモローサ様は御者からこの事を聞いて、あとを必死に追いました。 そして案外居場所はあっさり見つかりました、なぜなら囚われた建物の近くに私の身に付けていたアクセサリーが落ちていたのですから。 もうすぐここへ来るのではないでしょうか? ここまではすでに公爵邸を出るときに私がした…あなたが言うところの予言。」 「お前…何を…」 「今、ここには私とあなただけ、扉の外に扉の外に2人。 入り口に2人、巡回一人…計5人ですか…」 「この程度の人数なら、ネモローサ様達がすぐに蹴散らして助けに来てくれることでしょう そして犯人を捉えます」 「犯人の名前は『ディラム・プランテス』」 私がそう話おえて、ペンで文末を占めたその直後 ダンッバタバタという音が聞こえてきて、この部屋の扉が開いた。 「そこまでだ!」 その声は公爵邸にいた騎士たちのものだ。 そしてそのまま数人が部屋になだれ込んできて、 プランテス様の確保をした。 「な、なんだ!」 「拉致監禁の罪、そして人身売買の罪で捕らえさせてもらう。」 それを聞いて、伯爵は私の方を睨みつける。 「サルビア、どう言うことだ!?」 「お望み通り、予言をして差し上げただけですわ。 私の予言の能力はいかがでしたか?」 私は微笑みながら、ペンでぽんぽんと腕を叩く。 「予言は、望み通りの未来を見せるものではありませんわ。」 私が捨て台詞を吐くと、公爵邸の騎士たちに引きずられるようにして部屋から出ていき 嵐がさった後かのように部屋の中はシーンとなった。 「サルビア」 しばらくそこでぼーっとしていると、ネモローサ様がその中に入ってきた。 まさか、ネモローサ様まできてくださるとは思わなかったので、少しだけ驚いたものの、 「大丈夫ですか?」と少し心配してくださったことにありがたく思い笑顔で答える。 「お助けいただきまして、ありがとうございます」 「礼を言うのはこちらの方だ、 ここまですんなり現行犯で捕まえられたのはサルビアのおかげだ。 魔法使ってたとしても、後寝られてたらもっと時間がかかってた」 「お役に立てたなら光栄ですわ まさか、ここまで私が書いた通りにことが運とは思えず拍子抜けですわ。」 私は自分の肩をポンポンと叩いて凝りをほぐしていると 「どこか、怪我はしていないか?」 ネモローサ様から声がかかった。 「目が覚めて、少しお話ししただけなので。 なんなら、昨日徹夜した分ぐっすり眠れて体調万全ですわ。」 今日のこの作戦は、自分で言い出した作戦だったとはいえ 1日で作品をまとめるのは徹夜をしなければいけなかった。 もう少し時間をかけても良かったのだけど、 プランテス様が帰ってからでは意味がなかったので急ぎだったのです。 「こんな危険なことに、協力いただいて…感謝する。」 「お役に立てたなら良かったですわ。」 「それはもう、…いつまでもここにいるのは良くない。 この地下室から出ましょう。」 私はネモローサ様に手を差し伸べられると、それを掴んで地下牢を出た。 そして、青い空の…光の元に出た。
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