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シーズン1:エピローグ
これで…おしまいね。
ネモローサ様が、私に縁談を持ちかけた本当の理由は、
この事件の収束のため。
犯人が捕まった以上、この縁談後っこもおしまい。
「何はともあれ、事件はこれでおしまいね。
これでようやく何もかもから解放されて、好きなことができますわ。」
これでネモローサ様とお会いすることはなくなるでしょう。
そう思うと、少し心に穴がぽっかり空いたような気もしますが、
やっと帰って執筆に時間が使えると思えば、そのくらいなんでもありませんわ。
「ネモローサ様、これまで本当にお世話になりました。
これで安心して、領地に帰ることができます。」
私はネモローサ様に心からのお礼を言うと、肝心のネモローサ様はキョトンとした顔をして
「帰るおつもりですか?」
と私に当然の質問をする。
「だって、用事はもう済んだでしょう?
うちの領地の行方不明事件はプランテス様で、もう捕まりましたし。
ネモローサ様が私に縁談を申し込んだ目的は果たしたかと思うのですが…」
もう、どうしても私と婚約しなければいけない理由はないはずです。
しかしネモローサ様は頭をぽりぽりとかくと
「あなたは…何か勘違いをされているようだ」
と私につげる。
「勘違い…ですの?」
「まぁ、伯爵絡みはおしまいですが、あなたの問題はかなり残ってます。
あなたが魔法持ちである限り、同じようなことはまた起こり得ます。」
「え?」
「というか、そもそもあなたは魔法持ちだ。
魔法持ちが発覚した場合、どうなるかお忘れですか?」
「あ」
そうでしたわ、肝心な事を忘れておりました。
ネモローサ様のお仕事は魔法持ちの管理と保護。
魔法持ちが発覚した場合『いかなる身分の方でも公爵領にて保護をする』と言う決まりがあることを。
「このご時世なので公爵領であなたを保護をする。
この際縁談はどちらでも結構ですけれど、あなたはもう簡単に男爵寮には帰れませんし
君が魔法持ちである以上、自由を許すわけにはいかないんだ。」
「しかも、能力が能力なので…自由気ままに小説も能力的に許せないですね」
「そ、そんな!私の夢を奪おうと言うのですの!?」
「婚約を破棄するならそうなるしかありませんね…
しかし、公爵夫人になるなら、多少融通は効きますよ?
私の目の届くところであれば小説を書いてもいいですし売ってもいい。
そしてあなたに執筆する時間の自由は与えましょう。」
「で…でも…」
「いい男が、ここまでいい提案をしているのに…なぜ嫌がるのです?」
「そういうあなたは、なぜ私にそこまでよくするのです?」
「目的のためだ、と言うから私はあなたの優しさに理解がでいたのです。
なのに…目的が達成されて尚、あなたが私に固執する理由が分かりませんわ
そこまでの魅力…私にはありませんし…。」
「…」
カタコトのお世辞すらない。
というか、そういう時は否定せんかい!
「前にも言いましたが、結婚に恋愛は求めてない
君だって恋愛してる時間はないはずだ。
どうしても結婚しなければいけないのなら、この距離を保てるあなたが1番良さそうだ」
「それに、その距離感で一緒に暮らしたとしても
あなたとの結婚生活は、飽きない気がする」
それは…確かにそう思う。
好きではないが、嫌いじゃない。
それでいて、魔法のことも趣味のことも理解してくれて
友人のようなしょうもない口喧嘩を毎日繰り返すのは、楽しいだろう。
「それとも、あなたは愛を求めますか?」
「…愛を求めるのであれば、あなたみたいな口が悪い人間に捕まる前に
もっと前にいい男作って、作家は捨ててとっくに結婚してたでしょうね。」
そして、結婚がしたいのであれば、この人の縁談にもすぐに食いついていたでしょう。
「1つだけよろしいですか?」
「やっぱ…魔法持ちだから…ですか?
魔法持ちの女を逃すのが惜しいからですか?」
「マサカ、ソンナコトナイヨ」
「縁談はお断りします!」
愛がないことより、魔法目的のがムカつきましたので、盛大にお断りいたしました。
まぁ、とはいえ魔法持ちと発覚した以上、
私は公爵領から出られないので、気が変わった時にまだ申し込んでくださるのであれば、
もう一度くらい検討しようと思います。
ま、そんなに長く続かないと思いますけれどね。
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