夢 現

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神逐らいの剣は、この世で唯一、神獣の化身とされる者たちの肉体である神の器を、傷つけることのできる武具だからだ。 「跡目など、優秀な者を探し継がせればいい。俺の血筋にこだわる必要はないはずだ。 だから、よく当たると評判の夢占の巫女に、俺に子など出来ぬと言い切って欲しかったのだがな。あてが外れた」 立てた膝に肘をつき、からかうようにこちら見る尊臣に、可依は怒りとも哀しみとも解らぬ情動にかられ、言い放った。 「ですが、貴方様は御子を授かります! 跡目の件については、わたくしの預かり知らぬことですが、可愛らしい姫様で……確か、由良様と貴方はお呼びでした」 「ほう。子の名まで、もうあるのか。面白いな」 「た、戯れで申し上げているのではございませぬ! これは、紛れもないご神託で」 「──で? 巫女であるお前が、俺と契ると?」 一瞬にして詰められた距離。可依の身体を囲うように尊臣の両腕が置かれていた。 ()け反らされて初めて気づく体勢に、可依の鼓動が激しく打ち鳴らされる。 (ち、近いっ……) 「巫女として今日(こんにち)まで生きて来たろうに、神でなく一介の男にその身を差し出すというのか」 「わ、わたくしはっ……」 「悔やんでも、後の祭りというぞ?」 互いの額が触れそうに間近にあって。真実を射貫(いぬ)く黒い瞳に内面を暴かれそうになる。
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