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面白そうに、尊臣は可依を見やった。迷信などに左右されず、合理的に物事を運ぶこの男なら、可依の処遇もうまく取りはからうはずだ。
「側妻にはならぬということだな」
「貴方様の御子は、必ず産みます」
「ああ。……それで十分だ」
触れる手も、呼ぶ声も。記憶には残る。
肌を熱くする想いごと、欲にのみこまれて。心は彼方にあると、思いだせるだろう。
「……尊臣様……」
名を支配することを、霊力のある身の自分が赦されたのだ。それだけで、十分。
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