夢 現

5/5
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
面白そうに、尊臣は可依を見やった。迷信などに左右されず、合理的に物事を運ぶこの男なら、可依の処遇もうまく取りはからうはずだ。 「側妻(そばめ)にはならぬということだな」 「貴方様の御子は、必ず産みます」 「ああ。……それで十分だ」 触れる手も、呼ぶ声も。記憶には残る。 肌を熱くする想いごと、欲にのみこまれて。心は彼方にあると、思いだせるだろう。 「……尊臣様……」 名を支配することを、霊力のある身の自分が(ゆる)されたのだ。それだけで、十分。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!