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「彼の紹介も済んだということで、アシストクリエーションの代表取締役に関する決議に入ります」
向坂社長が誰を推薦するかは聞かされていないが、俺の気持ちはすでに決まっていた。
どんな形になろうと、俺の役目はスロープアシストと南萌を支えていく、ただそれだけだ。
「私としては、今後のスロープアシストの将来も見据えて、土方海里くんに任せたいと思っています」
社長の言葉を当然の流れだというように小さく頷く株主たち。
少しの間のあと、「皆さんから他の推薦がないようであれば、このまま採決を取ってもよろしいでしょうか」と声を上げた社長に、スッと一本手が挙がった。
「……私は、向坂南萌さんを推薦します」
「っ、」
「社長からのご指名はありがたいですが、私より彼女が適任だと思いますので、辞退させていただきます」
そっと手を下ろせば、隣に座る南萌が「ちょっと、海里……!」と驚いたようにこちらを見上げる。
俺にとっては、ずっと前から決めていたことだ。この会社を継ぐのは、俺ではなく南萌以外にあり得ない、と。
ざわめく会場。株主たちは俺と南萌を交互に見合わせ、眉間に皺を寄せる。
その中の一人が、「確かに南萌さんが優秀なのは分かっているが、女性が社長っていうのは荷が重すぎるんじゃ……」と苦言を呈した。
それを皮切りに、「向坂社長は跡取りのために君を婿にしたんだろ?」「これから正念場って時に、そんなリスキーなこと……」と口々に文句が放たれる。
「……っ、」
南萌が言葉を飲んだのが分かった。反射的に言い返しそうなのを必死に堪えたのだろう。
会社のために何が必要か、常に考えている彼女だ。自分が犠牲になってでも、必要な空気はしっかり読む。
頭の硬い株主たちに若き女性社長は受け入れ難いことはもちろん想定していた。
しかし、それでも……今このタイミングだからこそ、南萌が会社のトップに立つべきなんだ。
「女性だから、ダメなのでしょうか?女性に社長業は荷が重いのでしょうか?」
静かに話し出せば、会場がシンと静まり返った。
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