09.運命共同体

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「今時、女性社長は全く珍しくないですし、南萌さんは営業部の男性を抑えて、常にトップクラスの営業成績を収めています。顧客目線に立った営業と会社全体の利益を見据えた他部署へのトスアップなど、私にはない視点を沢山持っている人です」 立ち上がって、出席者一人一人の顔を見つめながら声を張り、彼女が社長になるべき理由を丁寧に説いていく。 婚約者の贔屓目なんかじゃない。俺はスロープアシストを担う一員として……南萌という新しいリーダーが必要だと確信しているんだ。 「皆さんに先ほどお渡しした今後の対応案資料には、改ざん問題の発生直後、アシストクリエーションにヒアリングに赴いた南萌さんからの提案が多く採用されています」 短い期間で顧客への対応、社員への対応、いくつものアイデアが提示された。 それはどれも他人の立場に立って物事を考えられる彼女らしい愛情深いものばかり。この資料を見れば、南萌がどれほど情熱的に自分の会社を想っているかが伝わるはずだ。 「よっぽど丁寧なヒアリングをしたのでしょう。今回の問題に対する関係社員からの始末署には南萌さんへの感謝と期待の想いが熱く綴られていました」 始末書には、「もう辞めようと思っていたけれど向坂さんがこれから作る会社を一緒に見たいと思いました」と何人もの人物が記載していた。 それだけの人望を集められる彼女の優しさこそ、社長になるうえで最大の魅力だと思うんだ。 「清水元社長からのパワハラでアシストクリエーションの社員が疲弊している今、彼らを束ねて再興していく新しいリーダーは、やはり南萌さんの他にいません。 何より彼女はこの会社を、社員を愛しています。 そんな彼女をそばで支え、寄り添いながら我が社をより発展させていくのが私の使命だと考えています。どうか、ご検討……よろしくお願いします」
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