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「んー?見せて」と私の両頬を掴んで強制的に持ち上げる海里。
しばらくじーっと見つめられて少し恥ずかしくなってきた頃、いつ見ても綺麗な顔が柔く微笑み、コテンと傾げられた。
「十分仕上がってると思うけど?」
「……へっ、」
「な、もうゆっくりしよ。今日は早く寝たいのに、南萌いないと俺寝れない」
「……」
珍しく甘いセリフを吐いたと思えば、ぎゅーっと私を抱き枕にして目を閉じるから……もう格好良さと可愛さのハイブリッドで死にそうなくらい好きが溢れる。
「ず、ずるい!そんなこと言って、私が明日顔パンパンだったら海里のせいなんだからね!」
「はいはい、俺のせいでいいから」
照れ隠しに頬を膨らませて睨めば、子どもを嗜めるみたいに適当に返されてほっぺたをムニムニ。
「こうすればいいんでしょ?」って。これがフェイスマッサージのつもりなんだったら、ちょっとやることが可愛すぎてしんどいよ?
こんな些細なことできゅっと心臓は縮み込むけれど、私ばかりやられてばかりは癪だ。
「余裕ぶってるけど、ちゃんと新郎挨拶覚えてんの?」
「あ?」
「ふふ、失敗したら私が慰めてあげるからね」
「……」
私だっていじってやりたいと、ニマニマしながらおちょくったのに期待に反して反応の薄い海里。
それどころか、フッと馬鹿にしたように笑って「この俺が失敗するわけある?そういうのは南萌の役割でしょ」なんて……さっきまでの可愛さが嘘みたいだ。
「にっ……くたらしい!やっぱりあんたはそういうやつよ!昔から変わらない!」
「怖い顔すんなよ。明日その顔でドレス着ることになるぞ」
「はぁ?結婚式前にやんのか?おおん?」
「あーはいはい、ごめんごめん」
サーッと引いていく波のように。喧嘩を買わずに引いていくから逆に腹立たしいんだ、この男。
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