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むうぅ、と口を尖らせて不機嫌顔を晒す私をクスリと笑った海里はまた「ごめん」と謝る。それからご機嫌をとるようにチュッと可愛いキスを唇に落とした。
ムカつくのに、それだけでちょっとだけ機嫌が治っちゃうのがまたムカつく。
「もう……ただでさえ一年も待たされてムカついてるんだから、これ以上機嫌損ねないでよね」
「お前がいい反応するからつい。怒るなよ、やっと明日本当の夫婦になれるんだろ?」
頭を撫でて甘やかされれば、つい調子に乗ってしまう私。
わざと頬の空気を抜かずに「でも、本当は一年前に夫婦になれてたはずなんだよ?」と終わったことにまた文句を言えば、「待ったからこそ価値が高まるってもんだろ」って簡単にプラス思考に変換された。
「10年かかって恋人になったんだ。一年くらい遅れたってどうってことない」
「……そうかなぁ」
「明日ようやく南萌が全部俺のものになるって思ったら、普通に嬉しいんだけど。南萌は違う?」
「そりゃあ……私もだけど」
照れながら答えれば、「だろ?」と嬉しそうに目を細めて。
「これからずっと一緒にいるんだから、いいよ。1年くらい」
「……うん。そうだね、なんかそう思えてきた」
海里の大きすぎる懐に絆される。長い人生の中で、結婚をお預けされた1年間なんて短いものに思えてきた。
……だって、一度は永遠の別れを覚悟したんだもん。
こうやって今そばにいられるだけで十分幸せだって本当はちゃんと分かってるよ?
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