10.遅ればせな二人

4/14
前へ
/288ページ
次へ
一緒にいて自然体でいられて、素直に甘えられる。こんな唯一無二の人に出会えたことも、これからの人生を歩んでいけることも……とてつもなく幸せな奇跡でしかない。 結婚式なんて、親と会社のための儀式的なものだって思ってたのに……一年もお預けされたらね、どんどん楽しみになって、海里と生きていく節目の儀式に思えてきたの。 だからね、人生の待ち時間って捨てたもんじゃない。 勿体無い、無駄にしたって文句を言いつつ、海里の言ったとおり、楽しみに待った時間が長いほど幸せの価値が上がるんだ。 「明日、楽しみだね!」 「……ふ、ご機嫌戻ってよかったです」 「海里も楽しみ?」 「んー……ちょっと、緊張してきたかもな」 「ええ?ふふ、失敗したらちゃんと慰めてあげるから、安心して」 ニマニマ笑って先ほどカウンターを受けたばかりの言葉を繰り返せば、「できれば失敗したくないんだけどな」と苦く笑われた。 さっきまで自信満々だったのに不思議。私の緊張が移ったのかな?……なんて。 相変わらず私は鈍感で。海里がくれたヒントに1ミリも気づかず、しっかりすやすや眠りについたのだった。
/288ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1992人が本棚に入れています
本棚に追加