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最後まで綺麗な一音を奏でて離れた指先。
ふぅ、とひとつ息を吐いてからこちらを向いてくれたのに……あまりの驚きと幸せに、泣きすぎて声が出せなかった。
一歩一歩近づいてくる海里に唇が震える。こんなにも人は人を愛せるのかと、限界を超えた彼への愛おしさで胸が張り裂けそうだ。
「プロポーズ、してなかったから」
「……え、」
ボソリと呟いて、目の前に掲げられたのは大粒のダイヤが光る婚約指輪。
呆然としながら「なんで……」と零せば、流れる涙をせき止めていた左手の指先を拾われた。
「本番の結婚式は会社の来賓ばかりだから、今……ここでプロポーズしたかった」
「……っぅ、こんなの、……ずるいよ」
ボタボタと涙を流す私に「ごめん」と、小さく笑いながら謝って。
それから、繋いだ左手を口元まで掲げ、まっすぐこちらを見据えて口を開いた。
「小っ恥ずかしくて、いつもちゃんと言葉にできなくてごめん」
「……ん、」
「今までちゃんと言えたことなかったかもしれないけど、……今日だけははっきり言葉にしたい」
一瞬、顔をこわばらせて。それでもしっかりこちらを向いて。
「……心から南萌を愛してる」
「っ、……海里」
「一生隣で、南萌を支えていくことを、あなたに誓います」
「……、」
「俺と結婚してください」
「……はい、喜んで」
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