『赤鬼』

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『赤鬼』

 ──とある住宅。二人の小学生が談話していた。  「まず用意するのはA4の白い紙、ボールペン、十円玉、あとテーブルだ」  「それで?」  「白い紙に『はい』と『いいえ』を大きく書く。そしてその下に数字、五十音を書く。あ、『はい』と『いいえ』の間に神社の鳥居の絵を書くのを忘れずにな」    「なるほど。それでそれで?」  「二、三人でテーブルを囲んで紙に書いた鳥居の位置に十円玉を置く。全員で人差し指を十円玉に置いたら準備は終わり」  「すげー! それで呼べるのか!」  「まだだよ。その後に全員で同時にこう言うんだ。『コックリさん、コックリさん、どうぞいらして下さい。もし来られましたら十円玉を動かし、はいと書いてあるとこまで行ってくださいまし』てな」  「それでコックリさんを召喚できるのか! いやー勉強になった」  「凄いだろ!? じゃあ、次はお前が俺に教える番だ。俺が知らない妖怪の『召喚方法』を教えてくれ」  「うーん、そんなのないよ」  「は? 交換条件の約束だろ! 俺だけ教えてズルいじゃないか」  「わかった、わかった。ちょっと今考えてるから」  ──少年はしばらく考える。  「あ、『合わせ鏡』のやり方教えるよ!」  「それなら知っている。てか、それ俺が教えたんじゃないか!」  「あ、そうだったね。じゃあ、『幽霊と通話できる番号』のやつを教えるよ!」  「それ電話ボックスからかけるやつだろ? もう古いぜ、それ……」  「うーん、そうか。あと何があったかな……」  「もしネタがないんなら、お前が持ってる『超合金』のプラモデルで許してやる!」  「駄目駄目。あれは限定物なんだから」  「じゃあ、教えろよ!」  ──少年は考える。  「あ、『赤鬼』の召喚方法を教えてあげるよ!」  「何それ!? 俺知らないんだけど!」  「赤鬼はね、普段は人間に擬態しているんだ。だから見つけるのが非常に難しい」  「擬態!? 知らなかった」  「赤鬼見たい?」  「見たい!」  「これはね……実は僕にしか呼べないんだ。しかも、割と早く会うことできる」  「マジか! 早く教えてくれ!」  「まあ、慌てずに。まず用意する道具は一つだけ。僕の机の引き出しの奥にある『紙』だ」  「紙? そんなんで赤鬼を召喚できるのか? 」  「そう。『紙』は多ければ多いほうがいい。ただし、『テスト用紙』に限る」  「それで?」  「一階に降りて夕飯の準備をしている僕のお母さんに『紙』を見せてくれ。そうすれば『赤鬼』にすぐに会えるよ」
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