『メリーさん』

1/1
前へ
/34ページ
次へ

『メリーさん』

 ──とあるマンション。女性が住む部屋に電話が鳴る。  「はい、もしもし?」  「……わたし……メリーさん……」  「はい?」  「……今……駅にいるの……」  ──電話が切れる。  「なに、今の!?」  ──数分後。再び電話が鳴る。  「はい、もしもし?」  「……わたし……メリーさん……」  「はい?」  「……今……海岸沿いにいるの……」  ──電話が切れる。  「なによ!? いたずら!?」  ──数分後。再び電話が鳴る。  「……はい、もしもし」  「……わたし……メリーさん……」  「ちょっと! いい加減にしなさいよ!」  「……今……小学校の前にいるの……」  ──電話が切れる。  「なによ、気味が悪い。しかも、だんだん近づいてきてるじゃない……」  ──数分後。再び電話が鳴る。  「はい」  「……わたし……メリーさん……」  「あなた、なんなの! いい加減にしないと警察に連絡するわよ!」  「……今……コンビニの前にいるの……」  ──電話が切れる。  「もしかして、本物のメリーさんなの!? 私に会いに来ようとしてるの!?」  ──数分後。再び電話が鳴る。  「……はい」  「……わたし……メリーさん……」  「……また!?」  「……今……公民館近くの時計台の前にいるの……」  ──電話が切れる。そして数分後。再び電話が鳴る。  「……もしもし」  「……わたし……メリーさん……」  「……ゴクッ」  「……今……アパートの前にいるの……」  ──電話が切れる。そして数分後。再び電話が鳴る。  「はい、もしもし」  「……わたし……メリーさん……」  「で?」  「……今……部屋の中にいるの……」  「どこのアパートですか?」  「……」  「場所、間違えてません?」  「……」  「私、もうアパートに住んでませんけど? 二年前に公務員のイケメン男性と知り合って結婚して、今はお台場の高級タワーマンションに住んでるんで!」  「……なぬ」
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加