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『切り裂きジャック』
──とある広場。
突如、大きな雷が落ちる。
そして煙が立ち込める中、一人の男が姿をあらわす。
「ここは……どこだ?」
男は辺りを見渡す。
「わからない。なんだ、この場所は……」
男は歩き始める。
肌寒い風が吹きぬける中、男は夜空を見上げる。
「星が見える……てことは、ここは地球か!」
男は再び歩きだす。
ふと、男は自分が着ているコートの内ポケットに違和感をおぼえる。ポケットの中には新聞の切れ端が畳んで入っていた。男は新聞を開く。
【切り裂きジャック現る!】
「切り裂き……ジャックだと?」
男は新聞を続けて読む。
【またも新たな被害者が! ロンドン警察は人員を増やし、捜索を続ける!】
男は新聞を持ちつぶやく。
「そうだ……俺は警察から逃げていたんだ。馬に乗って隣町に行こうとした時に、橋が崩れてしまい川に落ちて流されたんだ……」
男は夜空を見上げる。
「そうだ。 俺は一度死んだんだ。そして、あの世で百年間、地獄で清掃活動をした功績を称えられ、閻魔様に特別に一日だけ地上の外出許可を貰ったんだった!」
男は歓喜する。
「やったぞ! 一日だけだが、こうして復活することができた! よし! もう一度、世の中に恐怖を与えてやる! たくさんの人を切り刻んで歴史に名前を残してやる! ハハハハハハ!」
男の薄気味悪い笑い声が静寂した夜の世界に鳴り響く。
「まずは女だ! 若い女を探そう! 久しぶりの狩りだ! うずうずしてくるぜ!」
男は不気味に笑い声を上げ、霧の中へと姿を消した。
──それから数分後。
「君、身分証ある?」
「身分証?」
「免許証かマイナンバーカードとか、ないの?」
「め、免許証…… マイナ……なんですか、それ?」
「なるほど……手ぶらってわけか。どこから来たの?」
「ロンドンです。一九世紀の……」
「君……もしかして、ハーブとかやってる?」
「ハーブ? ハーブティーなら好きですけど?」
「そうか。君、職質は初めて?」
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