『隣の芝生は美しい』

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『隣の芝生は美しい』

 ──とある大学のあるクラスにて。  「ねえねえ、今日の孝宏(たかひろ)君見た?」    「見た見た!ちょーカッコいいよね! 布帛ハットの帽子も相変わらず似合ってるし!」  「噂によると孝宏君の腹筋……バッキバキに割れてるらしいよ!」  「マジ!? ちょー見たいんだけど!」  ──その頃、三軍の男子グループ内では。  「女子のグループ、また孝宏の話で盛り上がってるよ」  「つまんねえよな」  「あいつは確かにイケメンだし、頭も良いし、スポーツも万能でサッカー部のキャプテンだし、そりゃモテるわな」  「バレンタインは二十個くらい貰ってるしな。自分じゃ食べきれないから一軍グループの友達にあげてるらしいぜ」  「いいな、いいな。しかも孝宏、学年一のマドンナ春奈(はるな)ちゃんと付き合ってるしな」  「春奈ちゃんはあれだろ、孝宏に一目惚れしたんだっけ? 羨ましいよな」  「いいよな。孝宏、悩みとか無いんだろうな。毎日幸せそうだし。まさにリア充だわ」  「あー俺、孝宏に生まれ変わりたかったわ!」  「イケメンだからなに着ても似合うしな。孝宏の帽子、俺が被ったらただの売れないマジシャンみたいになっちゃうし……」  「あははは。売れないマジシャンって!」  ──そして、とある家。  「ただいま!」  「あ、おかえり。孝宏」  「母さん、今日もまた筆箱の中の文房具勝手に取られたんだよ!」  「また!?」  「それにまたユニフォームも盗まれちゃた」  「ユニフォームも!?」  「多分、いつものように女子たちの仕業。しかも、今日家に帰る途中、何人かの女子につけられちゃったし」 「あんた毎日大変ね……」 「ノイローゼがひどくなっちゃうし。円形脱毛も五つできちゃうし。あーあ、三軍のグループの奴らが羨ましいよ。あんなに髪の毛生えてるんだもん……少し分けてほしいよ」
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