『連れ去られる』

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『連れ去られる』

 ──とある廃校寸前の小学校。  昔から、ここの学校ではこんな噂があった。  『花子さんがまた出たらしいよ……』  なんでも、この小学校では”トイレの花子“さんを目撃したという生徒が後を絶たないらしい。  面白そうな情報を聞いた俺は早速、その小学校に向かうことにした。  学校の門は閉まっていた。  今日は日曜日だ。  先生も生徒もいない。好都合だ。  門を登り学校に入る。  そして、花子さんが出ると噂される一階の多目的ホール近くのトイレに向かった。  薄暗い女子トイレが目に入る。気味が悪いが覚悟を決めて中へと入った。  電気のスイッチを押す。が、壊れてるのか電気がつかない。仕方ないのでそのまま薄暗いトイレの中を進む。  そして、花子さんが出ると噂される三番目の個室トイレの前に立つ。リュックからビデオカメラを取り出し、録画のボタンを押す。片手にビデオカメラを持ち、トイレのドアを三回ノックする。  「は〜な〜こさん!」  自分の声が響き渡る。  薄気味悪い静寂の中、手払い場の蛇口からポタポタと落ちる水の音だけが耳に入る。  「は〜な〜こさん!遊びましょう!」  返事はない。  やはりあの噂は作り話だったのか……。  ふと、女子トイレの入口に気配を感じた。視線を向けると黒い人影が。  目をこらしめてよく見る。  それは私よりも大きな人影。  それは、ゆっくりとこちらに近づいてきた。  霊感のない私だが、直感で分かる。絶対に何かヤバい。  そして……それは私の目の前まできた……。  私は逃げようとした。が、恐怖で身体が全く動かない。  そして……そいつはゆっくりと口を開き、こう言った。  「……署までご同行いただけますか?」
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