『香水』

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『香水』

 ──とあるデパートの香水売り場。  一人の青年が女定員と話していた。  「こちらが当店オリジナルのハチミツ香水になります。こちらの商品は、一つのミツバチの巣で一個しか作ることができない大変貴重な商品です」  「へえー。でも匂いはただのハチミツなんでしょ? 甘ったるい匂いってなんか嫌だな」    「こちらは天然のハチミツで作られた香水となっておりますが、不愉快になるような強い匂いはしません」  「お値段は?」  「はい、こちらは税込みで三万五千円となります」  「うーん。香水一つでその値段は……ちょっと高いかな」  「こちらは従来の香水とは違うものとなります!」  「と言いますと?」  「この香水をかけますと、女性がたちまち虜になります!」  「嘘くさいな」  「本当です。ただし、ハチミツが好物な方のみに限ります」  「なるほど。ようするに、ハチミツが好きではない女性が、この香水の匂いを嗅いでも意味がないと?」  「さようでございます」  「うーん、今気になるバイト先の若い女の子は確かパンケーキが好物だったはず。もしかしたら、ハチミツも好きかもしれない。よし! では、一個買おう! 」  「ありがとうございます!」  青年はバイト代をはたいて香水を購入した。  ──翌日、バイト先にて。  「先輩なんか今日、いつもより良い匂いがしますね!」  「そ、そう? たまたまだよ。あはははは!」  「なんか今日は先輩の側でずっと匂いを嗅いでたいな……」  「マ、マジ!? いやー、ちょっと困るな。あはははは!」  こうして、青年はバイト先の若い子女の子と付き合うことになった。  そして、青年は女の子に自分の趣味であるハイキングを誘ってみる。  女の子は二つ返事で了承し、二人は休みの日、山でハイキングをすることとなった。 ──後日  「夕方のニュースです。昨日、山でハイキング中に野生の熊に遭遇するという事件が起きました。ハイキング中の男女二人の前に二十頭のツキノワグマが現れたもようです。現場に居合わせた女性のインタビューです」  「ビックリしました。本当に急に現れたんです。私達は走って逃げたんですけど、熊たちは私のほうには目もくれず、彼氏が逃げたほうに走って行きまして……あ、なんとなくなんですけど、熊たちは怒っていたというよりかは、みんなかなり興奮していたように見えました……」  「女性は怪我なく無事保護されましたが、男性のほうは現在も行方がわかっておらず、地元警察が捜索を続けているもようです」
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