12人が本棚に入れています
本棚に追加
『足りないもの』
──とある大きな会場。
そこではキックボクシングの試合が行われていた。
一人は背丈が二メートルある選手。もう一方は背丈が一メートルの選手。
二メートルの選手はとても冷静に動いているのに対し、一メートルの選手は自分のパンチやローキックが上手く当たらず、カンカンに苛立ちながら試合をしていた。
一メートルの選手は感情を剥き出しにしながら二メートルの選手に対し、パンチのラッシュを繰り出す。
しかし、二メートルの選手は冷静に全ての攻撃をかわし、一メートルの選手にカウンターで右フックを食らわした。
一メートルの選手が仕返しにと突っ込むも、二メートルの選手の膝蹴りが一メートルの選手の顔面にまともに入る。
一メートルの選手はそのまま泡を吹いてリングに倒れ動かなくなり、二メートルの選手のKO勝ちとなり試合は終了した。
試合のあと、控室では身体がボロボロの一メートルの選手が、自分に勝った二メートルの選手に質問する。
「俺には何が足りなかったの?パワー?スピード?それとも技術?」
二メートルの選手はしばらく黙ったあと、ゆっくり口を開きこう言った。
「‥‥‥慎重さが足りないんだよ」
最初のコメントを投稿しよう!