「久しぶり」と、彼女は笑う。

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 仕事や日常生活のストレスで何もかもやる気が無くなっていた時、それは届いた。  見覚えの無い配達物であったが、差出人の欄に彼女の名前が書いてあったため、不審に思いながらも荷物を受け取った。その中身は…USBメモリーだった。 『君が寂しくないように』  同封されていた紙を見る。  筆跡はアイツのもので間違いない。見間違える訳がない。  直ぐにパソコンを立ち上げ、テキストボックスにパスワードを打ち込む。USBの中には、何かのデータが入っていた。  データ名は八桁の数字の羅列。  これも忘れるハズがない。彼女の誕生日だ。  データを二度クリックすると、また何かのデータのダウンロードが始まる。  それなりに時間がかかりそうだったが、黙ってデータのダウンロードが完了するのを待っていた。  その間に、無意識にアイツとの思い出が、走馬灯のように蘇る。もう随分前の事だ。  しばらくしてデータのダウンロードが終わると、一瞬画面が暗転した後に白い背景が映し出される。それを見て俺は、目を見開いた。 『…久しぶりだね。元気にしてたかい?』  その顔を、見間違える訳がない。彼女との記憶を、忘れるハズがない。アイツの声を、聞き間違えることだって…。  数年ぶりに見た彼女の顔は、あの頃と全く変わっていなかった。
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