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久しぶり、といっても時間の経過としてはたったの1か月。だけど、週5日通いつめた日々からすると、十分久しぶりだ。
早めに家を出たせいか慣れ親しんだ道に霞が渡り、いつもと違ったふうに見える。それに最後に登校した二月の中旬の空気は頬を刺すようなキリッとした冷たさだったが、今はいくらか和らいでいて心地いい。
そんな気候の変化もよりいっそう久々感を引き立てて、今日、高校を卒業する俺の感傷の念に輪をかけた。
校門を通り抜けてから昇降口までの景色は、どこも変わっていないはずなのにどこかよそよそしい。
三学期、自由登校になってから俺は一度も登校していない。そのせいだと思うことにした。
たとえば、卒業式を終えたのち、ここに来なければならない機会があったとしたら、それはもう”よそよそしい”なんて軽いものではなく、拒絶に近い感覚をうけるのだろうな。
そう考たら、率直にさみしさ感じた。
そして無意識のうちに、わざとのろのろ歩きながら2年の昇降口の人通りを眺めていた。
ここで毎朝人探しをしていた。
ずっと続いてる習慣みたいなものだからついつい同じようにしてしまったが、もう、決して見つけてはいけない。俺はあわてて俯いた。この時間なら、行き会うこともないのに。
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