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「よお、砂川じゃん。どうしたの? 今日は早いじゃん」
いつもより早い時間だと、普段会わないヤツに会う。同じ部活で何かと一緒にいる機会が多かった佐々木だ。
そもそも佐々木のせいで、久々の登校がすべてにおいて気まずいのだといえる。
居心地の悪さを感じた俺は「ああ、うん」と、適当に返事をした。
「なんだよ。なに、そんなキョドってんの?」
「キョドってねえよ」
「ああ、あれか。あの二年生探してんの? 井土くんだっけ?」
井土という音を聞いただけで息が詰まる。そうだ。俺は、井土にだけはけっして出くわすわけにいかない。そのために早く登校してきたのだ。
「いやいや、探すわけないだろ。っていうか会ったら一番ダメだろ」
「そうかね。べつにいんじゃね? 後輩なんだし」
「お前が言うかよ」
「はは! やっぱ気まずいか」
「あたりまえだろ」
ひと月前、俺は井土に大変な迷惑をかけてしまった。
こいつ、佐々木のせいで。
もう二度と顔を合わせることは許されない。自由登校の直前でよかった。あの時は心からそう思ったものだ。
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