6人が本棚に入れています
本棚に追加
冥王十字陵
人が死したのちに必ず行く場所、冥界の最深部に、その男の姿があった。
「ふむ。やはりここか。ここにおわすのだねえ。いと高き真の霊王が」
そう言って、とうに死した男が、左目のモノクルの蔓を触った。
「ただねえ。これだ。ホントにあるのかな?こういうことが」
男は、玄室の閉ざされた扉に立っていたのだが、その、何人たりとも開けることの適わない玄室の扉に、彫られた文字の痕跡を見つけていた。
縦に向かって彫られた、5文字の文字列。
1文字目が「お」で、5文字目が「す」だった。
こんな偶然が、あるのかねえ?
その男、左目にモノクルをかけた、スーツ姿の伊達風な男、勘解由小路細が見たものは。
「うちの孫の家の、表札みたいだねえ?」
何千年前に彫られ、誰の手で彫られたのも不明だが、その文字は、明らかに。
「おいでやす」って、どっかの馬鹿んちの表札みたいになっていた。
今度こそ了
最初のコメントを投稿しよう!