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流紫降抱いてテレビ
あー♡昨日はいい夜だった♡
相変わらず、ノースリーブのシャツを着た真琴は、お尻フリフリして花瓶の水換えてるし。
未だ休職中のおっさんは、テレビでも点けようと思ったが、足元に、可愛い息子の存在を認めていた。
「お。どうした?流紫降?」
両手を伸ばして、抱っこをせがんでいた。
「そうか。抱っこでいいのか?うん?じゃあ、肩車してやろう。狐池さん、固定を頼む」
ヨジヨジと、体を上った倅が、首に足をかけたところで、狐池さんの職能、座標固定能力で、動かないようにしていた。
「お前はともかく、俺が転んだら危ないもんな?ママ、ちょっと書斎に行ってくる。碧を頼むぞ?」
息子を肩車して、勘解由小路は杖を突いて歩き出した。
着いたぞー。流紫降、膝の上おいで。
ちょこんと、息子をお座りさせて、勘解由小路はテレビを点けた。
陰新聞ドットコム。小鳥遊の馬鹿が開設した、動画サイトだった。
「相変わらず、長野は大変みたいだな。お、トキ発見。ヘルメット付けて指揮してんな。それにしても」
ああ、これはカメラに映せんな。
諏訪湖周辺に、数多の妖魅が揃って土木作業をやっていた。
「お?デエダラボッチだ!ホニャニャニャーニャー、ホニャニャニャニャニャー」
何か、師匠連から派遣された、どっかの坊さんみたいなことを言っていた。
「にゃー」
お。流紫降、合いの手いいなあ。
楽器でも、プレゼントしてみようかな?来年の誕生日には。
「ふーん。よく呼んでこれたな。トキは。茨城から」
巨大な岩石を、背負子に積んでのしのし運んでいるのは、伝説の巨人ダイダラボッチだった。
住所は、常陸の国の那賀郡で。
これなんか、絶対に公表出来んなあ。いくら、来月には撤去が終わったとしても。
人間だったら5年はかかるな。
カメラにコッソリ映りまくっている怪奇。勘解由小路は、これどうしようか?そんなことを考えていた。
「あ?こちらモンゴル大使館」
ふざけているのかお前は!体が万全なら、さっさと顔を出せというのに!
電話が鳴って、親友にして上司でもある島原雪次に、手放しで叱られてしまった。
「ああもううるさいなお前は。顔くらい出してやると、連中には伝えとけ。流紫降ー、お留守番しててくれなー?」
「うん。とうしゃ。いってらっさい」
流紫降の頭を撫でて、勘解由小路の姿は消え、椅子に、タオル生地のぬいぐるみが残されていた。
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