流紫降抱いてテレビ

1/1
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ

流紫降抱いてテレビ

 あー♡昨日はいい夜だった♡  相変わらず、ノースリーブのシャツを着た真琴は、お尻フリフリして花瓶の水換えてるし。  未だ休職中のおっさんは、テレビでも点けようと思ったが、足元に、可愛い息子の存在を認めていた。 「お。どうした?流紫降(るしふる)?」  両手を伸ばして、抱っこをせがんでいた。 「そうか。抱っこでいいのか?うん?じゃあ、肩車してやろう。狐池さん、固定を頼む」  ヨジヨジと、体を上った倅が、首に足をかけたところで、狐池さんの職能、座標固定能力で、動かないようにしていた。 「お前はともかく、俺が転んだら危ないもんな?ママ、ちょっと書斎に行ってくる。(ジャスパー)を頼むぞ?」  息子を肩車して、勘解由小路は杖を突いて歩き出した。  着いたぞー。流紫降、膝の上おいで。  ちょこんと、息子をお座りさせて、勘解由小路はテレビを点けた。  陰新聞ドットコム。小鳥遊の馬鹿が開設した、動画サイトだった。 「相変わらず、長野は大変みたいだな。お、トキ発見。ヘルメット付けて指揮してんな。それにしても」  ああ、これはカメラに映せんな。  諏訪湖周辺に、数多の妖魅が揃って土木作業をやっていた。 「お?デエダラボッチだ!ホニャニャニャーニャー、ホニャニャニャニャニャー」  何か、師匠連から派遣された、どっかの坊さんみたいなことを言っていた。 「にゃー」  お。流紫降、合いの手いいなあ。  楽器でも、プレゼントしてみようかな?来年の誕生日には。  「ふーん。よく呼んでこれたな。トキは。茨城から」  巨大な岩石を、背負子に積んでのしのし運んでいるのは、伝説の巨人ダイダラボッチだった。  住所は、常陸の国の那賀郡(なかごうり)で。  これなんか、絶対に公表出来んなあ。いくら、来月には撤去が終わったとしても。  人間だったら5年はかかるな。  カメラにコッソリ映りまくっている怪奇。勘解由小路は、これどうしようか?そんなことを考えていた。 「あ?こちらモンゴル大使館」  ふざけているのかお前は!体が万全なら、さっさと顔を出せというのに!  電話が鳴って、親友にして上司でもある島原雪次に、手放しで叱られてしまった。 「ああもううるさいなお前は。顔くらい出してやると、連中には伝えとけ。流紫降ー、お留守番しててくれなー?」 「うん。とうしゃ(父さん)。いってらっさい」  流紫降の頭を撫でて、勘解由小路の姿は消え、椅子に、タオル生地のぬいぐるみが残されていた。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!