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そして
そして、モリモリ育った流紫降は、高校一年生になっていた。
朝、着替えていると、隣のベッドで、双子の碧が、半裸で、お腹を押さえて眠っていた。
あああ。碧ちゃん。双子の片割れに起きた、身体的変化を、どう伝えようか。そう考えていると、デボラマーキーの授乳ブラに、ナイトガウンを羽織った母親が、流紫降を起こしに来たのだった。
「流紫降くん、碧ちゃん、朝ですよ?」
「ああおはよう、母さん。碧ちゃんはまだ寝てるよ。母さん、昨日は、父さんとデートだったんでしょう?」
母親ソックリの、見目麗しい美少年に育っていた流紫降は、昨日、父親とホットな夜を過ごしたであろう、母親にそう言った。
「ええもう♡5人目♡5人目♡っていう降魔さんに、一晩中しがみついていましゅたよ♡」
5人目――か。勘解由小路一族は、その後も着々と人員を増やし続けていた。
ママさんメイドに兄の執事、おまけに庭に家を建てた、小うるさいお隣さんまで増えていた。
「あああああ。朝っぱらから聞きたくなかった。流紫降、ママ、おはよう。流紫降」
「おはよう、碧ちゃん」
「ジャスパーいうな!アオって呼べ!寝坊くらいで騒がないでよ。流紫降、リムジン呼んどけ」
碧ちゃんは、キラキラしたジャスパーという名を嫌っていた。
「駄目よ?リムジンは降魔さん専用なんだから。流紫降くんも、パパソックリだからといって、僕を便利に使わないでちょうだい?」
「ジ――アオちゃんが言わなきゃ、しないよ?」
「大体、リムジンじゃなくても、人力車くらいいいでしょ?烏丸さんだっけ?あのビビり下級悪魔がいればいいんじゃん。あ!そういえば、緑くんは?!あの滅多に笑わないエンジェルフェイスに、身も心も奪われちゃってるのよ私は!」
「とっくに学校に行ってるよ。莉里ちゃんも」
僕が1歳になって、7ヶ月後くらいに妹の莉里ちゃんが生まれていた。
「莉里?あんなガキあてになんないわよ。クティーラとどっか行ってるのかもね?」
別の友達メイドの名前を言って、制服に着替えて、流紫降とダイニングに向かった。
ダイニングに行くと、父親が、三田倉さんに新聞を広げて読ませてもらっていた。
「おはよう。蛇っ子」
「おはようクソ親父。ママの柔肌キスマークだらけだったわよ?昨日何回した?」
「真琴を解っとらんな。昨日付けたキスマークはとっくに消えている。付いてるキスマークはだな?さっきここで付けたもんだ。ところで、昨日ので子供が出来たら、名前は正二トリプルXだ。凄いだろう」
「だからやりすぎだお前は!あ!三田村しゃんおはよう♡昨日は、三田村しゃんが煎れた、甘い紅茶を零しちゃう夢見ちゃった♡あー。面外せあの初老執事マジカッケー。パンケーキ?!ママが作った奴じゃないなら食べる!」
「中身、気味悪いくらい俺ソックリになったなお前は」
父親は、ぼんやり漏らしていた。
鳴神、楓、興津に根来にトキといったメイド達を台覧して、家の入口で、僕等双子を見送ることになった。
「では、行ってらっしゃいませ、流紫降坊ちゃま、アオお嬢様」
「狐魂堂学園祓魔科の入学式だろう?暇なら出てやろう。俺は今、マコマコの尻の柔らかさ以外に興味がないところだ」
コッソリ、父さんは、母さんのお尻をモミモミしていた。
「父さん、狐魂堂学園の理事長だよね?ちゃんと式には出てお願い」
ああ!お尻をモミモミされていた母さんは、ハンカチで目頭を押さえて言った。
「あんなに可愛かった双子ちゃんが、今では高校生ですよ?降魔さん、嬉しいような悲しいような。今すぐお腹に赤ちゃんが欲しいのでちゅ♡」
結局母さんは、子供を生みたがっていた。
「何か、アホ臭くなってきた。行ってくるわ。入学式で、新入生総代として最高の挨拶をしてやろう。行くぞ流紫降」
それはどうかな?父さんは小さく呟いて、碧ちゃんのお腹を見ていた。
門の外に、父さんの人力車が止まっていた。
「じゃあ、行くか。流紫降」
「うん」
僕は、人力車の右側に座った。
姉の身に起きた変化、思わせぶりな父の言葉を飲み込んだまま、恐ろしいスピードで、人力車は新たな世界に走り出していった。
これから、僕と碧ちゃんの新たなストーリーが始まるのだ。
了
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