4ビートで踊りはするが進まない会議

2/3
前へ
/22ページ
次へ
 会議室の円卓には、国の中枢にいるであろう、お歴々が揃っているようだった。  あああ。勘解由小路は、怠そうな声を上げた。 「どんな人間がいるかと思えば、桜笑会か。占い大好きお笑い男子の集まりじゃないか。相変わらずお前等、消しゴムの箱の内側に、好きな女子の名前書いてるのか?稲荷山トキしゃま♡ってみっともない」  桜咲会(おうしょうかい)だろうに。笑わせてどうする。 「島原、こいつ等はどうってことない連中だ。由民党の幹事長だの防衛大臣だとか言ってるが、所詮トキの走狗の集まりだ。おい、コロッケパン買って来いよ。金?あとで払う。おおちょうどいいのがいた!鵺春(ぬえはる)!コロッケパンだ!コロッケパン買ってこいメキシコ!」  メキシコって、何だ?  ひときわ特別な、上座の位置にいた青年実業家風の青年に声をかけていた。 「宗晴(むねはる)だ!稲荷山グループ現総帥!稲荷山宗晴!よくもまあ相変わらず私をスクールカーストの底辺みたいに!」 「ああ。島原、こいつは鵺春っていうどうしょうもない、あかんたれのガキだった奴だ。トキの養子だ。あと継いだそうだが、全く役に立ってないし、いいとこが全然ない奴でな?仕事?ああ多分マリカー選手か何かだ。何かにつけてメッキシッコ!って叫ぶ」 「レッツゴーだって何遍言わせる?!だから私は、あんたになんか会いたくなかったんだ!」  ああ、64の頃だった。メッキシッコ!にハマってた時期が。  大学時代だったな。しょっちゅう言ってたのは。 「懐かしいな生きてたのかまだ。狐魂堂愛児園(こだまどうあいじえん)って福祉施設にいた奴で、「霊力に長けた、成績優秀の神童がおります」とかトキが言うんで会ってやったんだ。大学の休み利用して、正――おっと、幼馴染みの同窓会出たあとで。クソ生意気なガキでなあ、マリカーやらせてみたら、何と、1回も勝てなかったんだ俺に!キノコだ。キノコの使い方が悪い」  正――おっとって、誰だ?  近い将来、共闘する頼れる男として現れるであろう人物を忘れて、島原は宗晴のリアクションに目を奪われていた。 「あ、赤甲羅をキノコで躱せと?!」  遂に、彼はそのフィールドに落ち込んでいた。悲鳴のような声を上げていた。 「ああ。ニュータイプ的感覚で躱せって、何度も言っただろうがクッパ様だった俺が。島原、こいつはまあ、霊媒の端くれでな?まあ国家の霊的防衛で頑張れって言われてるんだが、その実他の養子達には馬鹿にされている可哀相な奴でな?付いた渾名がエル・アカンターレ、要するに奇跡のあかんたれとして無事家庭内カーストの最底辺の生活をだな」 「あああああああああああああああああああああああああ!!!もう嫌だああああああああああああああ!!この人おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」  遂に、宗晴氏は泣き出していた。 「もういい。宗晴君。君が、彼に頭が上がらないことはよく解った」  そう発言したのは、現防衛大臣の石動だった。 「ま、鵺春揶揄ったからいいか。ん?」  そこで、勘解由小路は何かに気付いた。  宗晴氏の椅子の周囲を確認し、下部の仕掛けと、それを制御するスイッチの存在に気付いた。 「石動のおっさん。スイッチ押せ」 「かしこまりました。猊下」  何故か石動大臣が頭を垂れ、恭しくスイッチを押すと、上座に座っていたはずの宗晴氏の椅子が浮かび上がり、ぐるりとレールの上を移動した。 「下座?!やっぱり?!」  宗晴氏の言葉をまるで聞き入れず、新たに隣室から移動してきた、いわゆるところの社長椅子が現れ、勘解由小路は、面倒臭そうに、その椅子に座った。  レールが、馬鹿の椅子を上座に運び、ああやっぱりか、座の上座に座った馬鹿を排除する気がないのは明らかだった。 「報告を入れろ。島原」  銃はどこだ本当に。  桜咲会を勝手に牛耳った馬鹿が、偉そうにそう言った。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加