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「そもそも!お前がこの方達に報告をするという集まりだろうに!何故いきなりその集団の先頭に立っているんだ?お前は」
「いや、その実、高校の時から結構会ってたしなあ。鵺春いるから、何だと思ったぞ。銃をしまえとりあえず」
銃口を、グリグリ押し付けられていた。頭に。
「猊下、改めて、長野で何が起きたか、話してはいただけませんでしょうか?」
与党幹事長が、恭しく言った。
「相変わらず幹事長やってんだなお前」
与党幹事長は、それが、自分の役目だとばかりに応えた。
「は。トキさまより、お前にはその位置が相応しかろうということで」
「まあ、元ヤンだったトキにくっ付いてたアイパー大盛り小僧が、今や幹事長だもんな?田部井ちゃん」
「その件については、お忘れいただきたく」
田部井幹事長がそう応えた。
石動大臣が、割って入った。
「今回の件は、そこの島原君からの報告書を受け取っているのだが、本人からして、よく状況を把握していないようで、殆どが君からの伝聞に近い。勘解由小路君、報告を私からも頼む」
島原は、思わず舌を巻いていた。
勘解由小路の命令には、猊下と言っていたが、それ以外の空気では、勘解由小路君と呼ぶその距離感に感心していた。
信頼出来そうな人物に思えた。
「まあ、要するに、諏訪様が目覚めて暴れた。細かく説明すると、長くなるぞ?」
「頼む」
勘解由小路の長台詞が始まった。
「まあ、五行を統べる盲いた龍神が暴れたんだ。被害は大きかっただろう。俺は、龍姫鳴神のママ乳吸い尽くして完全復活し、龍神退治して嫁を救い出した。逆に感謝して欲しいくらいだ。あのまま暴れたら、長野は完全に滅んでいただろう。真琴を神に崇める、新たな霊的国家が出来るのを阻止したんだぞ?子供も元気だし、今度妹が生まれるしな?父ちゃん大満足だ。文句あるか」
あるに決まっているだろうに。島原は、釈然としないものを感じていた。
「結局、死者は30人くらいか。百鬼夜行行列に掘り起こされて、その倍する人命を救ったんだし、まあ仕方なかろう。死んだのは、諏訪湖周辺でダンプ転がしてた不法投棄業者だし。責任問うなら、それはトキだろう。俺の嫁さん抹殺しようとしたんだし。あれはしばらく土木作業やらせた方がいい。400億?どってことない。トキの金だしな?」
得た結論。被害は被害だが仕方ない。責任の取りようがない。というものだった。
トキを責められないのはとうに解っていた。
この桜咲会は、トキを中央に置く組織といってよかった。
「ただ、問題は、実際の復興現場を、一切撮影出来んことにある。ダイダラボッチが土砂運んでるのを見れば、第2の怪獣騒動になる。埋まってた住民助けた、経凜々だの虎隠良だのをヒーローとして報道することも出来ん。今更妖怪が出たって、報道したって誰も信じてはくれん。これをどうするか。答えを聞きたいか?」
全員が、むっつり黙り込んだ。
「答えを言ってやろう。警視庁怪奇課を、その行動を大々的に公表するしかあるまい。とっくに、中国だの韓国だのから国家的な呪詛を受けてるだろうに。国家の霊的防衛を旨とする、組織を新たに立ち上げるしかない」
などと、とんでもないことを言い出した。
「予算は防衛費から出せ。人員ハードは陸自、お前等が出せ幕僚長だろう?霊的防衛庁の設立が済めば、直下の組織も容易だろう。霊刀東雲桜を持つ御迦園洸耀に、西の魂探女西陣真紀子。胡散臭い連中が犇めいてるじゃないか。そういや西陣の馬鹿はどこ行った?おい御迦園?ゲスト枠で見物に来た御迦園君?」
言われて立ち上がった、日本唯一最大の民間軍事会社、日本PMC社長御迦園洸耀氏が、
「俺が知るか!俺は絡んだりはせんぞ!今日は!お前の!馬鹿面を拝みに来ただけだ!」
ああ、彼は怒ると、センテンスが短くなるらしい。
「まあどうせ、お前はダーツにハマってるだろうし。ああこうしよう。ちょっと外す。島原はこの椅子に座ってろ」
空き缶1つを残し、馬鹿の姿は消えた。
重苦しい、沈黙が周囲を支配し、
「では、かけたまえ。島原君」
帰れなくなってしまった。
胃が痛くなりそうだった。
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