6人が本棚に入れています
本棚に追加
両国国技館の地下施設で、イラついてタバコを吸っている、稲荷山宗晴氏を見かけた。
ところで、御迦園洸耀は、勘解由小路が消えたのを確認し、さっさと帰ってしまった。
本気で、ただの顔見せのつもりだったようだ。
まあ、彼はまだ20歳になりたての、新鋭のCEOであるし、島原の名前くらい覚えてくれると助かるのだが。
島原は、宗晴に近づいていった。
「ああああああああああ!あの野郎!あいつがくると、何かがおかしくなるんだ!普段、俺はあんな扱いを受けることはないのに!貴方も同じでしょう?!長崎のヒルコの騒動は聞いている!同情を禁じ得ない!」
長崎の件は、ただでさえ島原のプライバシーに関わる話で、容易に発言出来なかった。
「私の時も、もう64だったのですが。緑の甲羅を、恐ろしい精度で撃ってくる奴だった」
「マリカーの話はもういい!あああいつは!前から母には言っていたのですよ!あの男、勘解由小路だからって、未だにうちをカード代わりにしているし!血の繋がりはないが、他の妹達、水仙に牡丹も、あいつを主筋か何かだと思っているようで、私の意見は、一切顧みられないんだ!貴方のことは、他人とは思えないのです!どうか!友達になってください!あのカス野郎に関わることでは、一切ご協力出来ないが!」
では無意味だろう。島原は、一切反勘解由小路活動を、するつもりはなかった。
そろそろ座に戻ろうか。あの石動大臣の真正面の位置の椅子に。そう思っていると、誰かが駆け込んで来て、大臣に耳打ちした。
額に、青筋のようなものを浮かべ、苦悶の表情で、大臣は言った。
「テレビを点けろ!全くあの猊下は!」
超大型のテレビモニターから、懐かしい光景が映し出されていた。
今度は、本物の記者会見だった。
最初のコメントを投稿しよう!