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この世の終わりのような顔をした、刑事部長が哀れすぎていた。
無数のマスコミのフラッシュを浴びて、我等が怪奇課の切り札が、ジョーカーを切ろうとしていた。
「まあ以上だ。被害総額は400億円、死者は30人くらいだ。だがまあ、未曽有の大災害を、未然に食い止めたんだ。礼は要らんぞ?」
桜咲会が、何としても隠そうとしていた事実を、先頭きって明るみに出した馬鹿の姿があった。
あの馬鹿が消えて、まず話し合われたのは、事実の隠蔽と、トキの保護だった。
ほぼ、自殺行為だぞこれは。島原は天を仰ぎたくなった。
「まあ、それで、これからは隠さずに行こうと思ってな?怪しい通報はじゃんじゃん受けよう。枕元に婆さんが立つだけでなく、襲いかかった時は俺達の仕事になる。エセ霊能者に頼んだりするなよ?俺が本物だ」
「読売新聞の谷浦です。本物ですか。それを、どうやって証明するのですか?」
場に、失笑が起きていた。まあそうなることは解っていた。
「それやったら会見終わってしまうが、まあいいだろう。新部署の名前は、警察庁紱魔課だ。我々は、君達の胡散臭さを何より求めている!ああところで読売、お前、学生時代ヤリサーにいただろう。権力の弾劾とか自衛隊消えろって活動以前に、そのことで頭いっぱいなスケベ野郎だったな?まあそれを非難する気はないんだがな?ただ――お前の背後にへばりついている、血塗れの女は、一体誰なんだろうな?」
たちまち場は、悲鳴に満たされていた。
島原には、脳漿を垂れ流した女が、谷浦記者にしがみついているのが見えた。
「お前に昏睡レイプ食らって、自殺した女だ。別に、洞察とかそういうのではなく、いるのが解れば話は別だ。ようこそマスコミ諸君。君達は、たった今怪奇の目撃者になった。ついでに、部長に憑いてるメリさん、さっさと消えろ」
いやーん。て声が聞こえて、刑事部長の肩の荷が下りたような顔をしたのが見えた。
ああ、随分前から、部長は、メリさんにまとわりつかれていたんだ。
これは多分、活動の場を、警視庁から警察庁に移した勘解由小路の、あいつなりの返礼だったのだろう。
「詳しくは、怪奇課のマヒマヒさんの動画を見ろ。以上解散」
谷浦の悲鳴が、いつまでも響き、勘解由小路の姿は一瞬で消えていた。
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