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第三話 いざ交番へ
「どうするか決めた?」
「決めたも何もさ……。」
放課後、終礼の後すぐに待ってましたと言わんばかりの勢いで夢に飛びつかれぐいぐいと引っ張られるがままに連れてこられた場所は第二公園前交番がある道の一つ手前の十字路だった。交番から見て斜め左の道、向こうからは死角になっており見えない場所。
ここまで連れてこられてやっと考えておくと発言した事を思い出した自分も自分だが、有無を言わさず連れて来た夢も夢だ。
「でも気になるじゃん、そのストーカー警察。」
「それはそうなんだけど、何にも心の準備ができてないから!」
「考えとくって言ったじゃん!……とりあえず、交番の前で立ってるのはちょっとおじさんで難しい顔してるけど、この人!?」
道の向こうにちょっとだけ顔を出して交番を見て顔を引っ込めた夢の顔は今まで見た事ないくらい輝いている。
この親友、絶対面白がってる。
「嫌、全然おじさんじゃ無くて眼鏡の若いお兄さんだったよ。」
「えー……、それらしき人は見当たらないなぁ。」
何度も顔を出しては引っ込めながら交番の様子を伝えてくる。
「いなさそうだし、やっぱりあのおじさんの警察官に声掛けてみよ!」
「え、ちょ、待ってよ!!」
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「眼鏡の若い警察?あぁ、それうちの交番の皇だよ。何かありましたか?」
五十前後に見える初老の警察官は突然飛び出して行った不審な私たちに私達に、自分のつるつるの頭を撫でながら優しく答えてくれた。
「(警察官だったのは本当だったみたいだね……。)」
「(本当だったじゃないよ、どうするのこれから!)」
小首を傾げたままの警察官を他所に夢と小声で話し合うが、夢は聞いた先の事は考えていなかった様で焦ったのがぐるぐると目が泳いでいた。
「あの、私皇さんに……!」
「あれ、亜久里さんと真次さんじゃないですか。」
とりあえず朝の被害だけ伝えておこうと口を開いた途端、朝私にプロポーズしてきた声と同じ声が後ろから聞こえた。
「皇、ちょうどいいな。知り合いか?」
「この前この二人から道を聞かれて道案内したんですよ。」
「そうだったのか!わざわざお礼を言いに来るなんてありがたいね。」
勿論この男が言ってる事は100%混じりっけの無い嘘だ。今日の朝が初対面なのに、この人に道を聞いた事なんてない。横目で夢を見るが、同じく夢も顔で「ないない。」と否定している。
「俺は一旦奥行くから、お前も戻ったら報告書書くんだぞ。お嬢さん達も気をつけて帰るんだよ。」
「分かりました!」
軽く敬礼をして交番に入って行ってしまう警察官に行かないで!と願ったがそれも虚しく中に入り今いる位置では見えなくなってしまった。
朝はそれどころじゃなくて気が付かなかったが平均より背が高い皇は先輩警官を見送るとにこにこと胡散臭い笑いを浮かべながら私と夢を見下ろしている。私は朝の恐怖を思い出し、全身に鳥肌が立つのを感じていたが辛うじて夢が隣にいるからこそ逃げずにいられた。
最初に沈黙を破ったのは夢だった。
「あ、あの!」
「何ですか?」
「アリスに付きまとわないで下さい!それから何で私の名前知ってるんですか!」
皇は顎に手を当ててうーんと考える仕草をして少し考えていたが、すぐにまたにこりと笑った。
「アリスさんに付きまとうのをやめるのは無理です、愛していますので。」
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